翌日、吾郎は、早くに目が覚めて荷物をまとめると痛む腰をさすりながら自分の部屋の前までやってきていた。
とりあえず、深呼吸をしてそっとドアを開ける。
「・・・・あれ、戻ってきたんだ、吾郎君」
「おっ、おう・・・悪かったな。寿」
昨夜のことがあるので、どぎまぎしながら答える。
そんな吾郎に首を傾げつつ戻ってきてくれたことにとりあえずは胸をなでおろす。
「なぁ、薬師寺はどこいったんだ??」
「ん? ああ、彼なら吾郎君の布団でまだ寝てるよ」
そう言われ、自分のベッドを覗いて見ると、確かにふくらみが見えた。
ほんの少し彼の寝顔を覗いてみたい衝動に駆られ、はしごを上り顔を覗き込む。
「・・・・なんか、すっげぇ幸せそうな面して寝てんな」
「どんな夢見てるんだろうね?」
クスクスと笑いながら見られているとは露知らず、低血圧な彼は昏々と眠り続けていた。
「おーい、薬師寺クン。朝だぞ」
「ん・・・」
つんつんとおでこをつつくと眉をしかめ、身じろぎをした。
が、まだ眠たいらしくスースーと寝息を立てている。
「もう・・起こしちゃ可愛そうだよ。そっとしておいてあげなよ」
「だってよぉ・・・寝起きの顔すっげぇ気にならねぇか??」
「そりゃ・・・気になるけど」
寿也がそう言ったとき、ふとドアをノックする音が聞こえてきた。
こんな早朝に一体誰だ?
不思議に思ってドアを開けると、そこには眉村の姿があった。
「薬師寺が、迷惑掛けてると思ってな・・・連れ戻しに来た」
(へぇ・・・意外と世話焼きだったりして?)
ずかずかと部屋の中へ入っていく彼を見ながら、寿也と吾郎は、一体どうやって起こすのだろうと、興味津々で見守った。
「おい、薬師寺。起きろ・・・」
「んー・・・だから、もう少し寝かせろよ・・・」
布団にしがみつきイヤイヤと首だけを動かす彼に眉村は苦笑した。
「全く・・・仕方のないやつだな。」
そう呟くと、徐に身を乗り出し眠っている彼に口付けた。
(うっひょー・・・ひょっとして、俺達・・・みちゃいけないモンを目撃してんじゃ・・・)
吾郎達はどうしてよいのかわからずにただ黙ってその様子を見ていた。
長い長い沈黙の後、ようやく薬師寺の腕がピクッと動くのがわかった。
「・・ふっ・・おい・・朝っぱらから、こういう起こし方は止めろっていつも言ってんだろ?」
「お前が、何をやっても起きないほうが悪い」
「しかたねぇだろ? 俺、朝弱いんだから」
「だが、もう目が覚めただろ?」
「んー・・・もう一回キスしてくれたら起きてやってもいいかな?」
すっかり甘えモードの彼に、吾郎たちは固まってしまった。
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