「よぉ、邪魔するぜ。」
「茂野!?・・・・・なんだ、その荷物は?」
「あれ? 薬師寺から聞いてねぇの?」
突然入ってきた吾郎に戸惑っている眉村は彼の言葉に静かに首を振った。
今日は朝から機嫌が悪く、後ろから抱きついたら蹴りをいれられ、そのまま出て行ってしまい、それから全然戻ってきていない。
吾郎の口から事情を聞かされ、眉村は深いため息をついた。
「・・・・・で? お前と薬師寺が交換になったのか」
「そっ。だから、よろしくな」
「ああ」
にっと笑う吾郎に対し、眉村は再びため息をついた。
その日は何事も無く終わり夜になった。
吾郎は、上の薬師寺の布団で眠るように言われて眠っていたが夜中にトイレに起きて戻ってきた後いつものクセで下で眠っている眉村の布団に潜り込んだ。
「!?」
すっかり寝ぼけて抱きつかれ、ギョッとして眉村は飛び起きた。
「んー・・・あったけぇ。寿ィ・・・」
「おいっ、俺は佐藤じゃねぇ!・・・って聞けよ!!」
慌てて引き離そうとするが、すりすりと擦り寄ってくる相手に思わずドキッとしてしまう。
仮にも、以前好きだった相手だ。
自然と鼓動が早くなり眉村は困惑した。
そんな気持ちなど全くお構いナシに、相変わらず寝ぼけてボーっとしている吾郎は上目遣いで覗いてくる。
そんな彼に目が離せないでいると、顔がだんだん近づいてきて唇を塞がれた。
大胆なその行動に驚いている暇もなく、口腔内に舌を挿入し絡ませてくる。
互いの口からあふれ出した唾液が頬を伝い、それに色香を感じて堪らず吾郎を抱きしめた。
そんなに積極的に誘われては、若い彼の理性も持ちそうにない。
けれど寿也の恋人である彼に手を出すと恐ろしいことになるのは目に見えているし、自分にも恋人がいる。
なんとか、気を紛らわそうとしていると不意に吾郎の手が頬をそっと包み込む。
「・・・・なぁ、シよ?」
そっと囁かれぎょっとした。
戸惑いを隠しきれずに思わず声が裏返ってしまう。
「はっ!? な・・・何言ってるんだ!? 茂野!」
「いいじゃねぇか・・・。なぁ?」
潤んだ瞳がとても妖艶に見えて、思わずごくりと喉がなった。
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