眉村が部屋に戻ると、薬師寺は珍しく眉村のベッドで眠っていた。
スースーと寝息を立てて眠る姿にドキッとしたがすぐに自分が汗臭いことに気が付いて、触れようとした手を引っ込めた。
物音を立てないように自分の着替えを持ってシャワールームへ向かうため部屋を出た。
どのくらい、眠っていたのだろう。
薄暗い部屋のなか薬師寺はふと、目を覚ました。
なんだか頭がふわふわとした感覚の中、起き上がろうとして自分のズボンを踏みつけてベッドの角で危うく顔面を強打するところを、すんでのところで回避した。
「あっぶねぇ」
妙にぶかぶかの自分のズボンに首を傾げ、それでも何とかベッドから這い出す。
途中ズボンが邪魔になってしまい、脱げてしまったが何度も引っかかってイライラしていたため気にしないことにした。
(あーあ、ゴムでも緩んでたかな・・付け直すの面倒くせぇ)
どうしても肩がずり落ちてくるシャツも、なんだかいつもよりぶかぶかのような気がする。
おまけに視界がいつもより低いように感じて、薬師寺は眉を顰めた。
(なぁんか変だな。まぁ、いいか。それより喉が渇いたから自販機行くか)
そう思って短パンを探し出し履いてみるが、やはりどれもブカブカでずり落ちてくる。
さすがにおかしいと首を傾げていると、ちょうどそこに眉村が戻ってきた。
眉村はドアを開けた瞬間、見覚えのない少年に眉村は固まってしまった。
「よぉ、どうしたんだよ、んなとこ突っ立って……」
「?」
「ん? なんか変だぞ眉村。俺の顔に何かついてんのか?」
毛先がくりくりっとしたちょっと生意気そうな少年が、自分を見上げていて眉村はとっさにベッドを見た。
先ほどまで眠っていたはずの彼がおらず、なぜかズボンだけ柵に引っかかっている。
「おい、薬師寺はどうしたんだ」
「はぁ? 何言ってんだよ、俺はココにいるじゃねぇか」
「……」
お互い視線が合ってそのまま沈黙。
「ちょっと、来い」
「なんだよ!?」
眉村は、薬師寺を鏡の前に連れて行き、その姿を映し出す。
「……」
「これで、わかっただろ? 薬師寺はどこだ?」
未だに疑っている眉村は、鋭い瞳で小さくなった薬師寺を見つめ、当の薬師寺は鏡に映る自分の姿に絶句していた。
「おい、聞いてるのか!?」
イラつく声で尋ねれば、薬師寺の肩がビクッと強張る。
「け、健。俺、夢でも見てんのか?」
さーっと一気に血の気が引いて、縋るような瞳で眉村をみた。
「俺、小さくなっちまった!?」
部屋に薬師寺の素っ頓狂な雄たけびが響き渡った。
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