ある日、眉村たちの部屋に吾郎がやってきた。
「悪りぃな、これ返しにきたぜ」
宿題のノートを取り出すとそれを薬師寺に手渡した。
「たく・・・ちゃんと宿題くらい自分でしろよ」
「あはは・・わぁってるよ。あ、御礼にこれやるから、勘弁してくれよ」
そう言って、飴玉をひとつ手渡すと吾郎はじゃーなー♪ と手を振って去っていってしまった。
「・・・ったく、俺はガキじゃねぇっての!」
手のひらの飴玉を見つめ、去っていたドアを睨みつける。
「変わった包み紙だな」
ちょうど喉が痛かったため、のど飴くらいにはなるだろうとそれを口に放り込む。
口中に甘いミルクの味が広がって、なんとなく懐かしい感じがした。
一方、部屋に戻った吾郎はポケットの中に入っている飴玉を見てギョッとした。
(やっべぇ・・・間違えて、薬師寺に子供になっちまうアメ渡しちまったぜ)
しばらくは、どうしようか。と悩んでいたが吾郎の性格上あまり物事を深く考えないので、すぐに考えるのをやめてしまった。
(ま、渡しちまったもんはしゃぁねぇからな。わざわざ返せって言いにいくのも面倒だし)
うーんと、伸びをしてそのままトレーニングルームへと向かった。
トレーニングルームには眉村がいてちょうど部屋に戻る途中だった。
入り口のほうで吾郎と鉢合わせ、何事もなかったかのように、汗で張り付いたシャツを引っ張り袖で顔の汗をぬぐう。
そしてそのまま部屋へと戻って行った。
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