それから数日。
俺は例の薬を使うか使うまいか迷っていた。
こんなものを使わなくても事に及ぶ事はできる。
だが、薬師寺が自分から積極的に強請って来る所を想像するとやはり見てみたいと思ってしまう。
自分から誘ってくる事なんかまず殆どあり得ない。
抜かずに2連発しようもんなら平手打ちが飛んでくるほどだ。
カップと封を開けた薬を前に悶々と葛藤を繰り返す。
「何やってんだ、電気もつけないで」
「!?」
いきなり背後から声を掛けられ、うっかり薬はカップの中へ。
「なんだコーヒー作ってるのか、だったら俺の分も頼む」
何も知らない薬師寺はひょいと後ろから覗き込むとそれだけ言って自分の机に荷物を置いた。
こ、これはチャンスかもしれない。
どうせ薬はカップの中。
ヤるなら今しかない。
俺はそう決心し、ドキドキしながら震える手で媚薬入りアイスコーヒーを注いだ。
「――ほら」
「お、サンキュ」
媚薬入りのコーヒーを手渡すと、薬師寺は確認も疑う事もせずにそれに口をつけた。
コレを飲んだら薬師寺は……。
乱れた薬師寺を想像するだけで下半身が焼け付くように熱くなる。
何も知らない薬師寺はゆっくりとソレを飲み干してゆく。
ふと、目が合った。
ドキリと胸が高鳴り息が詰まりそうになる。
「どうしたんだよ、さっきから黙って。まぁ、元からあんましゃべるヤツじゃねぇけど……」
不思議そうに顔を覗き込まれ、堪らずソファに押し倒した。
「……っ」
「ぅわっ!?」
興奮気味に首筋に顔を埋める。
嗅ぎ慣れた体臭が鼻を掠め胸の鼓動が早くなる。
「おい、どうしたんだよ。くすぐってぇ」
頭の芯がボーっとして首筋に鼻を寄せると小さく肩を竦めた。
形のいい薄い唇にむしゃぶりつきたいような衝動に駆られ壁に押し付けて唇を重ねる。
強引に歯をこじ開け口腔内に舌を滑り込ませる。
逃げようとする顎を掴み舌先で擽るとおずおずと舌を絡ませてきた。
「んっ!? っふ……ぁ……バカッ、何サカろうとしてんだっ」
鼻から抜けるような甘い声。
紅潮した頬や僅かに乱れた息遣い。
そんな声を聞かされたら理性なんか保っていられない。
腕を片手で押さえつけたまま首筋をペロリと舐めると薬師寺が小さく身体をよじった。
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