眉薬 他

LoveSick


眉村SIDE

昼食を食べた後、キャッチボールをする約束をしていたはずなのに、いくら待っても薬師寺が来ない。

アイツは、時間にはきっちりしているはずだから、何かあったのかもしれない。

不安になって、寮内を探したが何処にも見つからない。

・・・・・と、なるとあそこしかないな。

薬師寺が好きだといっていた俺達しか知らないはずの秘密の場所。

ソコに俺は向かって歩き出した。

湖に近づいていくと、なにやら声が聞こえてきた。

薬師寺のほかに誰かいるのか!?

そう思って木陰からそっとのぞいて見る。

目の前に飛び込んできた想像を絶する光景に、俺はまず、わが目を疑った。

榎本先輩が・・・・・・薬師寺の上に跨って、腕を押さえつけて首筋やら色んなところを嘗め回していた。

「や・・・っぁっ・・・はッ・・」

聞きなれた甘い吐息が聞こえてくる。

足がすくんで動けない。

そのわりに瞳だけはジッとその様子を凝視していて、手のひらには嫌な汗をかいていた。

薬師寺が・・・俺以外の男に・・しかも明らかに同意の下ではない貞操の危機に直面している!

今まで感じた事のない榎本先輩への感情がふつふつと沸き起こる。

「あっぁあっ・・・・健っ!助け・・てっ!!!」

薬師寺の声でハッとした俺は、地面を蹴って、榎本先輩の元へ行き胸倉を掴んだ。

「「!?」」

「先輩・・・俺・・・あんたを尊敬してたけど・・・・・許せません!!」

「・・・へぇ?だったら・・どうするつもりだよ?」

挑発的な目で俺を見る先輩。

カッとなって腕を振り下ろそうとしたら、薬師寺がそれを止めた。

「止めろ!!眉村・・・こんな事で暴力は・・・っ」

「離せっ!コイツはお前をヤろうとしたんだぞ!!」

許せない!絶対に!!!

「俺なら・・・平気だから・・・っ殴ったら、お前野球できなくなるんだぞ?」

頼むから、止めてくれ。

縋るように俺を見る。

仕方なく、俺は榎本先輩を掴んでいたその手を離した。

「賢明な判断だな。・・・・ククッ・・・悔しいか?・・・ケリはマウンドでつけようぜ。」

じゃぁな。

勝ち誇った笑顔で、榎本先輩は湖から立ち去っていった。

後に残ったのは、気まずい空気と、静けさ。

「・・・・悪い。約束・・・してたのに・・・。遅くなった上にこんな姿さらして・・・」

俯いて、なんともいえない表情をしている薬師寺を、堪らず俺は抱きしめた。

「健!・・・離せっ!」

「嫌だ。離さない。」

ぎゅっと抱きしめた腕に力が入る。

コイツを誰かに取られるんじゃないかという不安。

誰にも・・・渡したくない。

コイツは、俺のものなんだ。

今まで、感じた事のない感情に気づかされて、俺はさらに腕に力を込める。

「バカッ・・・苦しいから・・離せ!」

「・・・・・・・・・。」

「こんなトコ・・誰かに見られたら・・・まずいし・・・」

「・・・・・・・・。」

「俺・・・服・・ボロボロだから・・・」

小さな声でそういう薬師寺を、もう一度抱きしめて、俺達は部屋に戻る事にした。



/ススム





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テーマ「人外ファンタジー」
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