薬師寺SIDE
眉村に意を決して告白してから早数ヶ月。
一応、カタチだけは恋人として成立している。
既成事実もなんどか・・・・。
ただ、どうも俺の気持ちとあいつの気持ち・・・違うような気がして仕方がねぇ。
なんっつうのか・・・、俺は付き合いだしてから、今まで知らなかったあいつを知る事ができて、益々あいつに溺れている。
けど、アイツは相変わらず無表情で、特別俺を求めてくる節もねぇし、正直そんなに好きじゃないんじゃないかって不安になる。
寮の裏手にちょっとした湖みたなものがあって、俺は一人になりたいときにはよくココに来る。
眉村には一度だけ・・教えた事があったな。
初めてキスしたのも・・・・この場所だった。
初めてのアイツのキスはすごく熱くて、信じられないくらいドキドキした。
いつも、キスはするけど・・・あのときのキスと普段のキス。
同じはずなのに・・・何が違うんだろう?
ポチャンっ
湖に石を投げ込みながら考える。
スッっと俺の影が消えて水面に誰かの影が重なって見えた。
「なにやってるんだ?・・・・こんな所で?」
「榎本先輩!」
振り返った先には、1軍のエース榎本直樹先輩がいて、いつもと変わらないさわやかな笑顔を浮かべていた。
「隣・・・いいか?」
「え?あ・・はい。」
何で、この場所を知ってんだろう・・とか、別に俺の隣に座る必要ねぇだろ?とか、いいたいことは山ほどあったが、それはあえて言わないことにした。
先輩はニコニコ笑いながら、黙って俺を見つめている。
「・・・・眉村と・・・なんかあったのか?」
「・・・は!?」
ジッと見つめながら、先輩の口から意外な人物の名前が出てきて俺はギョッとした。
てか、なんで、榎本先輩が眉村のこと知ってんだよ!?
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