日中は何事もなく済んで、夜になった。
いつものように、なにげなーく米倉の部屋に集まっていた薬師寺は消灯間際になって入浴を済ませていないことに気がついた。
彼は、あまりごちゃごちゃ人がいるのは好きではないので、いつも一番初めか最後のどちらかに入る事が多い。
今日は、大浴場に行く途中に市原に声をかけられて、結局入りそびれてしまって、一番最後に入る事にしたのだ。
「悪いな。米倉・・・俺風呂行ってくる。」
「なんだ、まだ入ってなかったのか・・・。」
「人ごみの中じゃ入った気がしねぇからな。」
それだけ言うと、着替えを持って大浴場に向かった。
脱衣所には案の定誰もおらず、薬師寺は当たり前のようにシャンプー台の前に座った。
「あっれー、薬師寺。こんな時間に風呂なんて奇遇だね。」
突然声をかけられ、ビクッと身体が強張った。
「と・・・渡嘉敷!?それに、阿久津と・・・市原も・・・なんだ、お前らも今から風呂かよ・・・」
「うん、ちょっと、ゲームに夢中になっててさ・・・こんな時間になっちゃった。」
あははっと笑う渡嘉敷に、やや警戒しながらシャワーに手を掛けると、背中越しに視線を感じて手を止めた。
「・・・・・・・・・。あのな・・・なんで、みるんだよ。洗いにくいだろ?」
「なんで?気にするなよ。」
「そうだよぉ・・・あ!丁度いいや・・・俺達が洗ってやろうか?」
「は!?・・・はぁぁぁぁっ!?」
さらりと言われ、一瞬何を言っているのかわからなかったが、3人の瞳が怪しく光り、薬師寺は大げさなほどタオルを掴んで端の方へと逃げ込んだ。
「なんだよ、別にそんなに警戒しなくてもいいじゃねぇか。」
ジリジリと近づかれて、その辺に合った洗面器やらシャンプーのボトルを掴むと3人目がけて投げ込む。
ヒュンヒュンと飛んできたものを余裕でかわし、奥のほうでぶつかる音を聞きながら、3人はさらに近づいてくる。
「あ・・のな、俺、自分で洗えるから・・・大体、ガキみたいにそんな事高校生にもなってするか?普通・・?」
「いいじゃん、たまにはさぁ。」
「そうそう、あんまり暴れると、無理やりにでも洗ってやるぜ?」
にやりと阿久津が笑う。
その、世にも不気味な笑顔に、薬師寺はヒッと息を呑んだ。
「・・・・・・・わかった。じゃぁ、背中だけ頼む。」
「了解♪じゃぁさ、薬師寺は市原の背中でも洗ってやれよ。みんなで並んで洗おうぜ。」
「・・・・・・・・・・・はいはい。」
こうして、渡嘉敷→薬師寺→市原の順番で洗いっこが始まった。
(市原って・・・やっぱでけぇな・・・眉村と体格が大違いだぜ)
ごしごしと彼の背中を洗っていると、不意に後ろからぬるっとした手が伸びてきて、薬師寺は思わず手を止めた。
もちろん手の主は渡嘉敷で、泡のいっぱいついた手で執拗に胸の辺りをぬるぬると触れてくる。
「オ・・オイっ渡嘉敷っ!どこ触ってるんだっ・・・」
「え?どこって・・・胸に決まってるじゃん。」
「何当たり前みたいに言ってんだよ!」
「男同士なんだし、恥ずかしがる事ないっしょ?」
するっと、体中に石鹸を塗りたくられて、すべりがよくなった肌を、渡嘉敷の手が縦横無尽に這い回る。
時々、敏感な部分や際どい部分に触れられて思わず声が漏れそうになり、俯いて唇を噛んだ。
前/ススム