眉薬 他

LoveSick


薬師寺が、体育倉庫で貞操の危機に瀕している頃、眉村は、明らかに行動が怪しい市原に首をかしげていた。

「・・・・・・・・・・・・オイ、なんでついて来るんだ?」

「えっ!?い、いや・・ちょっと眉村に話したいことがあって。」

「・・・・・・?なんだ?」

「ええっと・・・その・・・;;」

「なんだ、用がないなら、俺は用があるから。」

スタスタと歩いていこうとする眉村のかばんを市原は咄嗟にはしっと掴んだ。

「・・・・・あのなぁ、一体なんのようだよ!?」

半ばイらついた声で尋ねると、すぐさま視線を泳がせる。

(ちっくしょー・・・なんで俺がこんな目に・・・眉村と一体なにしゃべればいいんだよ・・・;;)

市原の心には、今頃美味しい思いをしているであろう二人を思い出し思わず大きなため息をついた

そんな市原の様子を眉村は首をかしげながら歩いて薬師寺の教室のドアを開けた。

「あれ・・・?薬師寺いないな・・・。」

教室には誰もおらずかばんだけが残っている。

トイレかどこか行ったのかと、しばらく待つことにした。

「・・・・・・・・・・・・おい、市原、お前は一体なにがしたいんだ?」

待ってる間中自分を見張っているかのような市原の態度にさすがに眉村のイライラは頂点に達した。

「お前は俺のストーカーか?俺は薬師寺に用があるんだからいい加減どっかいけよ。」

睨み付けると、その不機嫌そうな様子にヒッと息を呑む。

これ以上ココにいるのは耐えられないとばかりに市原は脱兎の如く逃げ出してしまった。

「・・・ふぅ。全く・・・・なんなんだ、あいつは・・・・。」

薬師寺の椅子に座りながら深く息を吐くとその視線の先にふと一枚の手紙が目に付いた。

見てはいけないと思いつつ中を開いてみるとそれは例の手紙で、その特徴的な字に注目した。

「・・・・・・・この字・・・・・・どこかで・・・・うーん・・・どこだったか・・・。」

記憶の断片をたどっていくと、ある人物が浮かび上がってきた。

「阿久津の字だぞこれ・・・・阿久津が薬師寺に一体何の用が・・・・・・」

そこまで考えて先ほどの市原の行動を思い出す。

明らかに挙動不審だったあの態度、それとこの手紙。

急に胸騒ぎを覚え立ち上がると急いで校舎裏へと向かう。

ところがそこには誰もおらず、変わりに、薬師寺の携帯が落ちていた。

(絶対アイツになんかあったに違いない!)

血相を変えて学校中を探し回っていると、体育倉庫の前でウロウロしている市原を発見!

「おい!薬師寺はどこだ!?」

「お、俺は何も知らないよ!!」

胸倉を掴んで揺さぶると明らかに何かを隠すように両手を大げさなほど振ってみせる。

「じゃぁ、なんでこんなトコをうろついてるんだ!?」

「そ・・それはっ・・・・・」

市原が何か言いかけたそのとき、目の前の倉庫からゴトゴトっと音が響いてきた。

「・・・!!!歩っ!!!」

眉村は力いっぱい市原を突き飛ばすと、体育倉庫のドアを開けた。



/ススム





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -