眉薬 他
LoveSick
薄暗い通用口を足早に歩いていく。
ヤツの居そうなところと言えば、一つしかない。
3塁側ベンチから一番近い便所を覗くと案の定一つだけ扉の閉まった個室があった。
「おい・・、もうすぐ時間だぜ?」
・・・・・・・・・・・・・。
声をかけてみても返事はねぇ。
おかしいな・・。
いつもなら直ぐに出てくるはずなのに・・。
「おい、眉村?」
今度は少し強めにドアを叩いててみた。
反応なし。
もしかして・・人違いか?
うっわ・・それってすっげぇ気まずい。
沈黙が嫌でその場を離れようとしたその時、閉じていたドアがゆっくりと開いた。
「・・・薬師寺・・。」
「なんだ・・やっぱりお前だったのか。呼んだら返事くらいしろよな。」
「あぁ・・すまん。 聞こえなかったんだ。」
中から出てきたのは、やっぱりあいつ。
人違いじゃなくて、ホッとした。
ただ、いつもより少し表情が固いような気がするのは、緊張している所為だろうか?
「・・大丈夫なのか?」
「・・・・・・・・。」
尋ねてみても返事はない。
ただでさえ口数が少ないのに、今日はいつにも増してだんまりだ。
前/ススム