そんな考えに及び、じりじりと近づいてゆく。
そんな事気づくわけもない薬師寺は、じろじろと好奇の目で見られこめかみをヒクつかせた。
(う"−・・・・なんか、視姦されてるみてぇ・・・・っ足元なんかスースーして何も履いてねぇみたいだし)
「それにしても・・・綺麗だな」
「ああ・・・・。なんって言うか・・・・色気があるって言うか・・・」
誰かの呟きが聞こえてくる。
「誰だよ!? 色気があるとかいったヤツは!? あるわけねぇだろっ! つーか俺・・もう着替えてくるからっ!」
「あれ?・・・さっき泰造のおっさんなら、笑いながら戻ってったぜ? 着てた服はおめぇの部屋に後でもってくって・・・確か・・・」
「な・・何ィ!?」
吾郎のことばに、薬師寺は素っ頓狂な声を上げた。
(あ"-・・・・。なんか眩暈がしてきた)
額を押さえながら、ふらっとよろけたところで誰かにとんっとぶつかった。
「あっと、悪い!・・・・・・・ゲッ、眉村!」
振り向くと、ジッと目を細めながら真後ろに立っていてギョッとして体を強張らせた。
上から下まで舐めるように何度も見つめられ、恥ずかしさのあまり身体が火照りだす。
「・・・・っつバカッそんなに見んなよッ」
「・・・・・・・・・」
「あっれぇ・・・薬師寺真っ赤になってんぞ。カッワイイ」
「うるせぇ! 茂野だって・・・俺と同じ立場なら恥ずかしいに決まってんだろ!! 大体、お前らもそんなにみるな!」
ヤイヤイと騒ぎ立てるギャラリーに文句を言っていると不意に腕を掴まれた。
驚いている薬師寺を眉村は無言で引っ張ってゆく。
「お、おいっ! 何だよ突然・・・!?」
「・・・部屋に戻るぞ」
「はぁ!?」
ずるずると引きずられるように連行される薬師寺を、一同は感嘆のため息で見送った。
「はぁ・・・・いいなぁ。眉村のヤツ・・・・。あんな可愛い薬師寺と一緒にいられるなんて・・・」
「ホントだよなぁ・・・・」
「・・・・・・確かにかわいかったな」
「おい、お前鼻血でってぞ?」
阿久津、渡嘉敷、市原、そのほか数名の部員達は思った。
(あの姿を想像しながらヌけるな)
不埒な妄想ににやける部員達を余所に、薬師寺は部屋へと消えていった。
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