諦めない恋





「…んまい」

「そう?良かった!」


はっきり言って洋食より断然和食派だが、菜々緒の作ったオムライスは世辞抜きで上手にできていた。甘いケチャップと、ふわふわの卵に包まれた鶏肉入りのチキンライスは何時ものオムライスと違って美味しかった。


「菜々緒でもまともに作れるんだ」

「ほんと失礼しちゃうわねー」


そう頬を膨らまして俺の向かいの椅子に腰掛け、菜々緒もオムライスを食べ始める。
お腹が減ったと言ったところ、迷惑を掛けたお詫びにと言って家の冷蔵庫に余っていた食材で手際良く完成させた。普段から料理をする為か無駄がなく、味付けもちょうどいい。
何より普段母親がつけていたエプロンをワンピースの上から着て、料理をつくるユマの姿は、どことなくそそられるものがあった。


「んー!やっぱり日本のお米は世界一ね!!…でも本当に冷蔵庫の中のもの使っちゃって倫子さん怒らないかな」

「親父と旅行に行ってるから、まだ3日も帰ってこないし。腐らすより有り難いでしょ」

「そっか!ならいいかな…」


それから食事中は学校はどうだとか、俺の家族は元気かとか、そんな他愛ない話ばっかりだった。でも、本当に菜々緒は笑顔はたえない。途中匂いにつられてやってきたカルピンを見て、可愛いとはしゃいでいた。



「ごちそうさま」

「ごちそうさまでした!あ、私がお皿洗うから」

「ん…サンキュ」


立ち上がり、菜々緒はすぐに食器を洗いにかかった。
その菜々緒を追いかけてカルピンは足に纏わり付き、ゴロゴロと喉を鳴らしている。


「んっ…くすぐったいよカルピン」

「ほあらー」

「もう、リョーマもこれくらい私になついてくれたらかわいいのにねー」


菜々緒は、食器を洗い終えてエプロンを外した。ソファーで寛いでいると気が変わってリョーマに甘えに来たカルピンを抱き上げ、膝の上に抱き上げる。

俺だって、菜々緒に甘えたい。

カルピンを羨ましい眼差しで見ていると、何を勘違いしたのかお腹を出して甘えたポーズをする。


「わぁかわいい!ほんとかわいい、もふもふ!」

「ん…」


前屈みでカルピンを覗き込み、お腹を撫でる菜々緒。


「えーっと…」

「!…間違えた」


それを見ていた自分は、思わず菜々緒の頭を撫でていた。
なに、勘違いしてるの俺…


「ふふっ…でも、これはこれで気持ちいいね」

「…っ!」

かわいい、菜々緒の笑顔。


「…リョーマ?」



気づけば、目の前の菜々緒の腕を自分の方へ引っ張り、寄り掛かった菜々緒を抱きしめていた。




「ほんっと…ずるいよね、その笑顔」



俺に抱きしめられてる菜々緒の顔は見えない。
カルピンは急に立ち上がったことに驚いて膝から逃げて行った。
それでも菜々緒は抱きしめられたことに驚いたのか身を少し硬くして、そのままの体勢を保っている。


「どうしたの?リョーマ」


俺の頬に触れる菜々緒の髪は甘い匂いがした。
耳元で細く戸惑った声で自分の名前を呼ばれ、熱が出たみたいに頭がクラクラする。
心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらい、脈拍が上がったのがわかった。


「菜々緒」


久しぶりに会ったからか、歯止めが効かない。
抱きしめていた片手で菜々緒の髪に指を通しそっと梳かし、耳元で名前を呼ぶと、微かにビクリと身体を揺らしたのがわかった。
でも、止まらない。


「っ!くすぐったいよ、リョーマ」

「嫌なら突き放してよ」

「え?どういうい…ん!」


髪を梳いていた手で菜々緒の頭を抱えこちらを向かせると、状況が飲めずまだ目を白黒させている菜々緒の唇と、自分の唇を合わせた。寝ている菜々緒に落としたキスよりも、無理やり塞ぐようなキス。今まで溜めていた、自分の中の甘酸っぱい気持ちを流し込むように。


そっと顔を離し菜々緒を見ると、耳まで真っ赤にしていて、今あったことを確かめるように唇を指で触れていた。


「リョーマ…これ…」

「好きな人」


もう今更隠す必要なんてない、今言わなければ、また後悔する。


「菜々緒だから」


菜々緒は困惑した様子で、ストンと膝を折って床に座り込んだ。


「俺、諦めないから…菜々緒のこと」


ソファーに座ったまま俺は真面目な目で、菜々緒を見据える。
菜々緒は何も言わずに俺の目を見つめていた。























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