部活を終えてね、こっちは疲れてるわけですよ。帰って風呂入って友達のblog読んでーとか色々考えながらくそさみい中駐輪場までてくてく歩いてね、さあ帰りましょうと。今朝自分がチャリを置いたはずの場所に来たらチャリがなかった。正確には、私のチャリの鍵穴と思われる一部分が無造作にごろんと落ちていた。意味わかんないし。明らかに割られた跡あるし。もしかしなくてもアレですな。盗まれ、た?

「…なにしとるんですか」

絶望してうちひしがれていると、後ろから友達の後輩の財前君に声をかけられた。あんまり仲良くないけど、悲しさのあまり私は財前君に泣きついた。嫌な顔された。

「まぬけですね」
「待って。普通に考えて私悪くないと思うの」
「チェーン付けましたか」
「付けてません」
「…あほっすね」

今時チェーンと鍵ダブルで付けないと簡単に盗まれますよってそんなの知らないよ。鍵の意味ねえじゃん。だいたい学校で盗まれるとかありえないし。私の超絶ハイセンスなシャレオツチャリに目付けるのは認めるけど盗まれるのはさすがに困る。ていうか寒い。

「防犯登録しとります?」
「うん」
「なら今から被害届出して探してもらったほうがええですよ」

テキパキと私に指示を出してくるんだけどこの子もチャリを盗まれたとこがあるのだろうか。
ほんとうに悲しい。何が悲しいって身も心も疲れきってお腹ぺこぺこなのになおかつこの冷え切った気温の中チャリを盗まれた悲しさに荒みながら家までの徒歩30分を歩かなければいけないことがほんとうに悲しい。財前君乗せてってくんないかな。て、か。ん?財前君チャリ持ってないじゃない。どうして駐輪場にいるの?って聞いたら見覚えのある人が悲壮感漂わせて佇んでたからやじ馬しに来たんだって。優しいね財前君。わざわざ声かけてくれるなんて!

「というわけなので、とりあえず今日は帰る…」
「送りますよ」
「えっ」

驚いて顔あげたら財前君がキラキラして見えた。
や、でも悪いしいーよっつったらチャリ盗まれて可哀相なんでって言ってくれた。お言葉に甘える。途中、コンビニであんまんを買ってくれて私の頭にチャリの存在はなくなっていた。

「おいしいね」
「そっすね」

財前君の吐いた白い息とか真っ赤な鼻とかに一瞬胸がきゅんとした。ちょっと優しくされただけで好きになりそうどうしよー!ってなってる時にちらりと財前君と目が合って、ふ、と微笑まれて寒空の下私は完全に恋に落ちた。今日はチャリもハートも盗まれて大変だ。なーんちゃって!ええ、つまんない?ほっとけ!


20110103
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