パーフェクト生命活動番外編

・完璧生命番外編/幼児化ネタ


「なあここどこだ?」
「……ワア〜……頭痛い」

名前は、ぶかぶかの制服を着て自分を見上げる幼い少年を前に、ため息をつきながら額を押さえた。言うまでもなく個性の影響である。それが現れたのが雄英に着いてからであったのは不幸中の幸いだろうか。

「おまえ名前の親戚か?あ、そいつデクに似てんな。なんでそんな似てんの?」

矢継ぎ早に言葉を投げかけてくる少年と、視線を合わせるようにしゃがむ。彼は不思議そうに名前と真っ直ぐ目を合わせつつ、小首を傾げるというあどけなさを見せた。記憶の中にいる彼はもう少し警戒心が強かった気がするのだけれど、こんなにもフレンドリーな接し方をするのは名前がこの少年にとっての“名前”と酷似した顔をしているからなのだろうか。

「ねえ、君、今いくつ?」
「4歳」
「4歳ね……あのね、僕の名前、名字名前っていうんだけど」
「? 名前と一緒だな」
「君の知ってる名前と一緒だからね」
「……おまえなに言ってんだ?頭大丈夫か?」
「君の名前は爆豪勝己、個性は爆破でしょ?」

言い当てられて力一杯首肯する少年は、確かに自分が勝己であると肯定したわけだ。まあ、言うまでもなくわかっているけれど。

「ここはね、君にとっての未来。わかる?」
「……」
「12年後かな。今の勝己……あー……かっちゃんは、雄英高校1年生。君が今着てるのがサイズの合わない制服であること、ここが雄英高校の校舎であることが証拠かな」
「……名前は男だぞ?」
「かっちゃんが未来にいるんだから、僕が女の子になっててもおかしくないよね」
「そっか」
「うん」
「じゃあおまえは名前なんだな?」
「そうだね。ちなみに彼は出久だよ」
「へえ、デクも雄英入れたんだな」
「そうだねぇ」

随分と素直なのは、まだ子供だからだろうか。出久が雄英に入れたと言うことに対してなにかしら言い出さないのはおそらく、2人の仲が拗れていない時期だからだ。
まだ4歳だった名前は勝己のことをかっちゃんと呼んでいたのでそのように直したけれど、この容姿を相手にしているからか違和感なく舌に馴染んだ。

「八百万さん、かっちゃんサイズの服出してもらってもいいかな?」
「ええ、こちらに」
「わあ〜仕事が早い……ありがとう、八百万さん。かっちゃん、そのままじゃどっかひっかけちゃいそうで危ないから、お着替えしようね」
「ん」
「相澤先生、ちょっと着替えさせてきますね」
「ああ、行ってこい」
「じゃあかっちゃん、行こっか」
「んー」
「なに?」
「抱っこしろ!」
「……。なるほど、抱っこね」

こんなにも素直なやつだっただろうか、と一瞬真顔になりかけたが、まあ見た目も中身も今は小さな子供なのだ。抱っこを望むのも無理はない。脇の辺りに手を入れて抱き上げてやると、勝己はぎゅっと首回りに抱きついてきた。キュン、と母性本能が刺激されるのを感じる。勝己ってこんな可愛かったかな、と過去を思い返してみたが、記憶にある勝己はいつでもガキ大将であった。
一応更衣室まで来たが、名前は少し迷ったのち女子更衣室に入った。着替えは雄英の制服のサイズを幼児サイズにしたもので、ズボンはハーフパンツである。普段ノーネクタイの勝己に対しても幼児サイズのネクタイを出してくれるのだから、八百万の心遣いは素晴らしいな、と思う。

「かっちゃん、ネクタイ巻こっか」
「……首締まる……」
「あんまり強く締めないから、ちょっとだけ我慢できる?」
「……ん」
「うん、いい子。……はい、できた。苦しくない?」
「おう!」
「じゃあ……職員室行こっか。授業中は先生たちに見ててもらおうね」
「職員室ってさっきのとことちげーの?」
「うん、先生がいるお部屋。僕たち今から授業だから」
「……やだ」
「うん?」
「俺名前と一緒にいる」
「……う〜〜ん……先生に聞いてみないとわかんないけど……」

ぎゅ、と小さな手が名前の制服を掴んでいる。可愛らしいのでついつい「良いよ」と言いたくなってしまうけれども、授業なんて退屈だろうに、数時間もおとなしく座っていられるだろうかと名前は思う。確かに幼稚園で勝己はおとなしくしているべき時にはおとなしくしていられる幼児だったけれど。
とはいえじっとこちらを見上げてくる勝己を無碍にすることはできなさそうだったので、来た時と同じように抱き上げて教室まで向かった。

「相澤先生、かっちゃん、教室にいさせてあげてもいいですか?」
「俺は構わないが、大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思います、昔から頭良くて割と空気読めたので……かっちゃん、いい子にしてられるもんね」
「トーゼンだろ」
「ん。かっちゃんの席、そこね。僕の隣」
「……やだ」
「え、嫌なの?」
「名前、そこ座れよ!」
「うん?」


ここまで書いたところで、いやこれちょっとかっちゃんにしては可愛すぎるな………と思ったのでやめました。ごめんなさいでした。

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