破綻する妄想 例えば、と仮定するのが本当に報われることなどあるのだろうかと考えることがある。例えば自分がレッド先輩たちと同じような人間であるのなら。例えばサトコが同じように人間であるのなら。 崩壊という終わりを知ることもなく生きていくことができるのだろうか、と。 「ねえゴールド、充電が」 「またかよ」 分けて、という甘ったるい声を流してコードをゆっくりと取り出す。自分の耳の裏のプラグにさせ、とコードの片方を渡すとサトコもごく自然に頷いてそれを受け取り、ゴールドの髪の毛をゆっくりとかき分けた。ゴールドの指がサトコの太ももの付け根を撫でるようにプラグを探し当てれば今までの無邪気な表情とは違った、艶やかな笑みをくすくすと浮かべて見せる。ねえ、とまた甘い声を出すサトコを横目にゴールドはため息を吐いた。黙ってそのプラグに充電のコードを挿すとぴくりとその体は揺れ、瞳がぐらりと揺れる。 「ほら、繋がった」 「……だから?」 「もっと、つながろう」 自分のプラグを撫で、サトコは恍惚とした笑みを浮かべる。まるでいとおしむような動作は人間みたいで、ゴールドはふつふつとただの回路でしかない胸の中で何かがうずく気がした。 ――このぽんこつはなんでこうも、こんな時ばかり心得ているんだ。 そんな答えはそう作られたから、という結論に辿り着いてしまえばただの絶望しか覚えることができない。その絶望すら、作られたプログラム。 もしも人間だったら、という仮定を、希望を繰り返す。 もし人間であるのならば、この感情を理解することができたのだろうか。 もし人間であるのならば、この情欲を愛情とすることができたのだろうか。 「はあ……っ、」 「エロい顔」 「あはは、だってそう作られてるもん当たり前だろ」 「……ばかやろう」 お願いだから今だけはそういうことを言うのはやめてくれ、と。 言いたかった言葉をゴールドは呑み込むようにサトコにキスを落とした。 (言ったってきっとこいつには何一つ伝わらないから。) 2009.12.17 収納
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