彼は恐ろしいことをさらりと口にする。


「よくある話だよね」
「何が?」
「『崖から落ちそうな誰かと誰か、一方しか助けられないならどちらを選ぶ?』ってやつ」
「あー、なんか聞いた事あるかも…」
「…サトシなら、どっちを選ぶ?」
「どっちって?」
「そうだなあ……じゃあ、僕とピカチュウ」
「ピカチュウ。」
「………」
「だって、ピカチュウは飛べないじゃん」
「僕だって飛べないよ」
「シゲルには他にもポケモンたちがついてるだろ?お前なら、そのくらい何とかできそうだし」
「…とりあえず、褒められたんだね、ありがとう」
「どういたしまして?」
「…じゃあ、僕にポケモンがいなかったら?」
「それは…困るぜ…」
「そうだったら、君はどちらを助ける?」
「ん〜………あ、」
「ん?」

「じゃあオレが落ちる」

「…はい?」
「どちらか一人を助けられるってことは、三人のうち二人は助かるってことだから、オレが落ちれば二人は助かるよな?」
「……………いや…それはちょっと違うんじゃあ…」
「オレにはポケモンいるしな!」
「や、そうじゃなくて…」
「それに、」
「何?」

「ふたりがいない世界になんてつまんないもんな」


だからふたりが死ぬならオレが死ぬ!



2008.9.4 収納

日記ログ。
サトシなら意地でも自分も二人も助けそうだけど。

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