04




「そう……。じゃあこの町へは1人で来たの?」

「まぁ……そうなるっすね」



ホップの母親は俺の話を親身になって聞いてくれた。

トラックとぶつかった拍子にこっちの世界に来てしまったことも、俺のいた世界にはポケモンがいないことも。

俺自身も未だに混乱している上に、ポケモンの存在が当たり前なこの世界の人にとって、この話は到底信じられるものではないはずだ。

なのにこの人はバカにすることもなく、相槌を打ちながら黙って聞いていた。

「あの、こんなこと聞くのもどうかと思うんすけど……。
何で知らない人間の俺に、こんな親身になってくれるんすか?」

「そうねぇ……。あたしにはもう1人息子がいるのよ。
あなたを見ていると、その子が重なって見えるのかもね」

「息子?」

そういえば、さっき"ダンデの迎えを"って言ってたっけか。

何歳かは分かんねぇけど、俺と違って親元を離れて1人暮らししてんだな。

「今でこそ"無敵のチャンピオン"なんて呼ばれてるけど、年相応に思い悩むことだってあったわ。
あたしにとっては、大人になった今でも"大切な息子"に変わりないんだもの。
だからあの子があなたくらいの歳の頃を思い出して、何だかほっとけなかったのよね」

"滅多に帰ってこられないから、少し寂しいけど"と、眉を下げて笑う。

でもその笑顔は確かに、息子への愛情に満ちたものだった。

「それで、あなたはこれからどうするの?」

「いきなりのことだったんで、まだ何も決まってなくて……。
仕事を探そうにも、戸籍が無いだろうし……」

「この世界でどうするのかは、あなたの自由だと思うわ。
せっかくなら、ポケモントレーナーになるのも良いんじゃない?」

"ポケモントレーナー"−−。

小さい頃にゲームやってたから、大まかなことは分かる。

モンスターボールでポケモンを捕まえて、ポケモンバトルしながら強く育てていくんだよな。

正直"仕事"と言えるのかは疑問だが、この世界で生活していくにはそれが1番良いのかもしれない。

「確かに、ポケモントレーナーも悪くは無いっすね」

「決まったみたいね。
今日はダンデがあの子たちに最初のポケモンをプレゼントすることになってるの。
あなたも一緒に選ばせてもらうと良いわ」

「はい、ありがとうございます」

どの道すぐ元の世界に戻れる訳でもないんだ。

だったら今の俺にできることをやって、それを楽しむ方が良い。

要は"楽しんだもん勝ち"ってことなんだろう。

ホップの母親から"ジムチャレンジ"というものを教えて貰っている途中で、玄関のドアがガチャッと開く音がした。


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