03
ワイルドエリアを歩き回ること、約1時間。
エリアごとに違うという天候に振り回されたり、メッチャクチャ強そうなイワークに追われたりしながらキバ湖・東エリアに近付いて来た頃。
湖を泳ぐギャラドスやミロカロス(って言うらしい)の姿を遠くに見ながら一休みしていた。
『ユウヤ、大丈夫?』
「おー、なんとかな……。もう少し休憩したら移動するか」
『あれ? ねぇご主人、ご主人。
あのポケモン、ご主人のこと見てるよ』
「ポケモン?」
大和の言葉に辺りを見回せば、俺からやや離れたところに何かが立っていた。
アイツ、ポケモンなのか? 着ぐるみじゃなくて?
そのポケモンは俺と目が合うと、挨拶してるみたいに両手を振る。
愛嬌のある顔つきなのもあって女性ウケは良さそうだ。
「ヘイ、ロトム。あのポケモンの図鑑を見せてくれ」
スマホロトムがポケットから飛び出して、図鑑のページを見せてくれる。
あのポケモンの名前は"キテルグマ"。タイプはノーマル・格闘タイプらしい。
(手ぇ振ってることの意味は分かんねぇけど、たぶん挨拶なんだろうな……)
そう思って軽く手を振り返した途端、キテルグマがものすごいスピードでこっちに走ってきた。
何何何!? 何かスゲェ怖ぇんだけど!?
「おわぁーっ!?」
急いでリュックとスマホロトムを引っ掴み、エンジンシティ方面に向けて全力で走る。
けどキテルグマは一切スピードを落とすことなく走っていて、次第に距離を詰め始めた。
どこにそんな脚力秘めてんだ! 脚か、脚だよなどう見ても!
つか無言+真顔で迫ってきてんのが尚更怖ぇ!
やがてキテルグマの手が俺の背中に届きそうになった時、どこからか甘い香りが漂ってきた。
キテルグマもそっちに意識が流れたのか、走っていた脚を止める。
そのことに少しだけ安心した瞬間、何かにつまずいて盛大にコケた。
『あらあら。こんなに良い天気の日に穏やかじゃないわね。
おいたが過ぎるわよ、坊やたち?』
どこからともなく聞こえてきた声の主は、緑色の小さなポケモンだった。
両手に赤と青のバラが咲いてるのを見ると、草タイプなのか……?
バラのポケモンは俺とキテルグマを見比べると、キテルグマに向かってさっきの甘い香りを放ち始める。
そしてキテルグマがその香りにウットリとし始めたところで、何か紫色の液体を相手の顔に向けて飛ばした。
『ほら人間の坊や、ボサッとしない! 早くキテルグマから逃げるわよ!』
「お……おぅ!?」
状況は読めねぇけど、このバラのポケモンは俺を助けようとしてくれているらしい。
グイッと腕を引かれる感覚に正気に戻った俺は、ソイツと一緒にキテルグマから離れるのだった。
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