04

ダンデさんから推薦状をもらって、凪たちを休ませようと思ったその時。

空に3本ほど赤い光が流れ、さっきまでバトルをしていたフィールドに何かが落ちてきた。

恐る恐る近付いて見ると、それは黒いような青いようなといった色合いの見たこともない石だった。

隕石……? でもなんで地面にクレーターできないんだ?

「それ、もしかして願い星!?」

「しかも3つ! ほら、俺たち3人で分けるぞ!」

「願い星……?」

マサルが驚いた様子で俺の肩越しから謎の石を覗き込み、ホップがマサルと俺に1つずつそれを持たせる。

その後ろからダンデさんの"すごいじゃないか!"って声が聞こえた。

「願い星は本気の願いを持つ人の元に落ちてくるそうだ」

「最強のトレーナーになる! 最強のトレーナーになる! 最強のトレーナーになる!
……よし、3回唱えたからこれで願いが叶うはずだぞ!」

「んな"流れ星に願い事"ー、みてぇに……」

でもチャンピオンを目指してるホップやマサルならともかく、なんで俺の分まで落ちてきたんだ?

こっちの世界に来てまだ日が浅いから、今の段階では本気で叶えたい夢なんて持ってねぇのに。

(それに……)

俺の片手にスッポリと収まる大きさの、願い星。

初めて見るはずのそれが、なんか妙に手に馴染む気がするんだよな……。

「ホップ、願い星は未知のパワーを秘めている不思議な石……言わば"ガラルの宝物"。
ただし、そのままでは使えません。私に預けてごらんなさい」

「そうだよ! 博士はダイマックスの研究家!
明日になればきっと、ダイマックスが使えるようになるぞ!」

「おやおや、焦らないで。ポケモンを巨大化させるには条件があるのだから。
マサル、ユウヤ、あなたたちの願い星も預かりましょう」

「……あ、はい! お願いします」

「お願いします」

マグノリア博士に願い星を預けたところで、"ただいまー"という女の人の声が聞こえた。

声の主はソニアだったみたいで、"帰ってみたらなんか盛り上がってるし……"と零した。

「おっ、さっきぶりだねユウヤ君!
その封筒持ってるってことは、ダンデ君から推薦状もらったんだ?」

「あぁ、まぁな。ソニアは仕事終わりか?」

「うん、まぁそんなとこ。……って、どうしたのダンデ君?」

「ソニア……いつの間にユウヤ君とそんなに仲良くなったんだ?」

ソニアから見ても年下の俺が、気さくに話をしていることに驚いたんだろう。

ダンデさんがキョトンとした顔で俺とソニアを見ていた。

「私から頼んだんだよ。歳も近いし友達感覚で接して、って」

「そう、か……。それなら俺だってユウヤ君と歳は近い!
ユウヤ君、ぜひ俺とも友達感覚で……」

「や……ダンデさんはちょっと無理っす……」

「何故だ!?」

これがマンガとかなら"ガーン"って文字が背後に出そうな雰囲気で、ショックを受けるダンデさん。

何故って言われても相手はチャンピオンな訳だし、今の俺には"雲の上の存在"っつーか……。流石にこの人を呼び捨てとタメ口は気が引ける。

「はいはい、張り合おうとしない。
ところであなたたち、晩ご飯も食べてくでしょ?
私、最近流行りのカレーライス作りに凝ってんだよね」

「良いのか、ソニア!?」

「カレーなら俺も得意料理だし、手伝うぜ」

「やったー! 僕カレー大好き!」

泊まらせてもらう部屋に荷物を置いて、ソニアを手伝うべくキッチンに向かう。

凪たちには他のポケモンと遊んでくるように伝え、カレーの仕込みに取り掛かるのだった。


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