04
「やぁユウヤ君、よく来たね。リザードンも案内ありがとうな」
『お前に道案内任せたらいつまで経ってもたどり着かないだろ』
「アハハ……。初めて来る場所だし、リザードンがいてくれて助かったっす」
それは良かったと笑うダンデさんの目が、大和に向けられる。
順調に仲間が増えていることを、自分のことのように喜んでくれた。
「俺の幼馴染もワンパチをパートナーにしているんだ。
せっかくだから紹介しよう」
ダンデさんに促され、研究所の中に足を踏み入れる。
オシャレな内装とインテリアに彩られた玄関に、大和とは別のワンパチがいた。
『ダンデ、いらっしゃい』
「久しぶりだな、ワンパチ。いつも案内ありがとう。
ソニアはいるか?」
「ダンデ君、今日は何?
"まだ見ぬ最強のポケモンを知りたい"とか、無茶はやめて欲しいんだけど」
どこからともなく聞こえてくる、凛とした女性の声。
中二階になっているらしい場所に、サイドテールの女の人が立っていた。
もしかして、あの人が"ソニア"さんなのか?
「紹介しよう。彼女はソニア。
マグノリア博士のお孫さんで、俺の幼馴染なんだ。彼女の手料理は手早く食べられて良いんだよ。
パートナーのワンパチも、道に迷った俺を何度も助けてくれたんだ」
「もう! 昔一緒にジムチャレンジに参加したからって、どんな紹介だよ……。
それにワンパチだけじゃなくて、私もあなたを助けたよね!?」
ダンデさんの(ある意味)雑な紹介に、ソニアさんが呆れた声を出す。
でも付き合いが長いからなのか、それとももう半ば割り切っているのか。即座に気持ちを切り替えたらしく、俺に向き直った。
「初めまして、私はソニア。マグノリア博士の助手をしています」
「あ、ども……。俺はユウヤ。
こっちはメッソンの凪と、ワンパチの大和っす」
『こんにちは』
『よろしく、ソニア!』
「わっ、あなたもワンパチをゲットしたんだ!
このムチッとしたフォルムと愛嬌のある顔、良いよねぇ。……うん、可愛い!」
『やった! 褒められたよ、ご主人!』
「おぅ。褒めてもらえて良かったな」
褒められたことと頭を撫でてもらえたことが嬉しいのか、大和がニコーッと笑う。
ソニアさんのワンパチとも仲良くなったみたいだし、案外コミュニケーション能力高いのかもな。
「ユウヤ君は旅立ったばかりの新人トレーナーなんだ。アドバイスを頼むぜ、ソニア」
それだけ言うと、ダンデさんはシュートシティに戻るとかで研究所を後にした。
その後ろ姿を見送った後、俺の隣でソニアさんが小さくため息をつく。
「ハァ……人を何だと思ってんだろ? マイペース過ぎるから迷うんだよ。
それより、ユウヤ君はここにどんな用?」
「あ……実は、ポケモン図鑑をもらいに来たんす」
「そうだったんだ。スマホロトムは持ってるよね?
図鑑入れてあげるから貸してみて」
スマホロトムを手渡すと、ソニアさんは"ちょっと待ってて"と言って研究室の奥に入っていった。
待っている間に研究室の内部を見回していると、彼女はすぐに戻ってきた。
「はい、どうぞ。あとマップが入ってないみたいだったから、ついでに入れといたよ」
「あざす。助かるっす」
試運転として大和をスキャンしてみる。するとアニメでお馴染みだった音声案内が流れた。
大和……もといワンパチは電気タイプらしい。あぁ、電気をパチパチさせてるからワン"パチ"なんだな。
画面の下の方を見ると"技"というボタンがあって、それをタップしてみる。
すると大和が覚えているであろう技の一覧が表示された。これは助かる。
「ちなみに、そのポケモン図鑑は私のお祖母様からのプレゼントだったりするのです」
「そうだったんすね。じゃあお礼を言いに行かねぇと。
それにしても、研究者の助手してるなんてすごいっすね」
「ありがと。でも一応助手……あくまでも"自称・助手"なんだよね。
反対にダンデ君は立派なチャンピオン……。何だろ、スッキリしないなぁ」
"自称"でも研究者の助手してる時点で十分すげぇって俺は思うけど、ソニアさんはどこか納得が行ってないみたいだ。
……色々と複雑なんだな。
「何かごめんね、湿ったこと言っちゃった。
お祖母様に会いたいなら、2番道路の先にある家にいるから行ってみて。
あと私のことは呼び捨てとタメ口で良いよ」
「へっ!? 博士にはもちろん挨拶に行きますけど、呼び捨てとタメ口はちょっと……」
「大丈夫、大丈夫! ホップもそうしてるし、なんならあなたの方が私と歳も近そうだし。
……もしかして、年上のお姉さん相手だと緊張しちゃう純情君だったり?」
「うぐっ……」
イタズラっぽく笑いながら俺を見るソニアさんに、思わずたじろぐ。
そりゃあ俺だって男だし、美人なお姉さんとか可愛い女子とか見ると"良いなぁ"って思うこともあっけど!
そもそも異性とそんなに話したことが無い上に女の人が好きそうな話題とかよく分かんねぇし!
あとソニアさん、元の素材が良いからすげぇ可愛いな!
「……なーんてね! 単に私が堅苦しいのそんなに好きじゃないだけだよ。
せっかくこうして縁ができたんだから、友達感覚で接してもらえると嬉しいかな」
「か、からかわないでくださいよ! でもまぁ、そういうことなら……」
天真爛漫というか、フレンドリーというか。
人の懐に入り込むのが上手い人なんだな。さすがダンデさんの幼馴染……。
「お祖母様には私から連絡入れておくね。ポケモンとの旅、楽しんで!」
「……はい!」
研究所を出てブラッシータウンの駅前に行くと、ホップとマサルが俺を待っていた。
事の経緯を話すと2人もマグノリア博士に用事ができたらしく、一緒に行こうということになったのだった。
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