04
「ユウヤ君、バトルを始める前に君のスマホロトムを渡しておこう。
君が持っていたスマホは使えないようだったから、新しいものを用意させてもらったよ」
そう言って、ダンデさんが2台のスマホを渡してくる。
1つはもちろん、俺が元の世界で使ってたスマホ。もう1つは特徴的な形の、新品のスマホ(黒)だった。
スマホって確か、結構良い値段するよな……?
「あ、あざっす。でも今は持ち合わせが……」
「気にすることはないさ。トレーナーになった君へのプレゼントだと思って受け取ってくれ」
そこまで言われてしまってはさすがに無下にすることもできない。
出世払いで返そうと心に決め、礼を言ってスマホを受け取った。
簡単に使い方を教わってから、凪に覚えている技を聞いて確認する。なんとかなるだろ、たぶん。
「よーし! では3人とも、準備は良いか?」
「いつでも良いぞ!」
「僕もOKです!」
「正直自信はねぇけど……まぁやるっすよ」
3人が決められた立ち位置につき、モンスターボールを構える。
同時に投げられた4つのボールが弧を描き、中のポケモンたちもバトルコートの地面を踏みしめた。
「シングルバトルよりは難しいけど、これも伝説の始まりになるんだ。
やるぞウールー、サルノリ!」
「僕たちだって負けないよ! ユウヤ、サルノリは僕とヒバニーに任せて!」
「お、おぅ。ウールーは任せろ!?」
「ユウヤ、声がひっくり返ってるんだぞ」
「それでは……バトル開始!」
ダンデさんの号令が響くと同時に、小さなバトルコートにピリッと緊張が走る。
な……何はともあれやってみるしかねぇよな、うん。
「先手は貰うぞ! サルノリ、メッソ……じゃなかった。凪に木の葉!」
『まっかせろー!』
無数の木の葉が凪へ向かって一直線に飛んでくる。
た、確か草タイプって水タイプに有利なんだよな? ここは無難に避けるか。
「避けろ、凪!」
『任せて』
凪がその場でジャンプして木の葉を避ける。
その隣ではマサルがヒバニーに二度蹴りを指示していた。けど……
「そうはさせないぞ! ウールー、コットンガード!」
『ふわふわもこもこ、行っくよー!』
『うわっ!?』
ウールーの全身を包むもこもこの毛が膨らみ(それとも増えた?)、ヒバニーの足がズボッと埋まる。
自分の毛を緩衝材代わりにすることで、物理ダメージを減らしたのか。硬くなるだけが防御じゃないんだな。
だったら……!
「凪! ウールーに接近して水鉄砲!」
『OK……!』
俺の知ってる水鉄砲(プールとかで使うやつ)を優に超える勢いの水が、ウールーに向かって真っ直ぐ飛んでいく。
体全体が満遍なく濡れたウールーの毛が、大量の水を含んだことで膨らみを失った。
「よし! 今だマサル、ヒバニー!」
「う、うん! ヒバニー、もう1度ウールーに二度蹴り!」
『今度こそ……! とりゃあーっ!』
『うわぁっ!? グエッ!』
ヒバニーの二度蹴りがクリーンヒットし、ウールーが目を回して倒れる。
後はサルノリに勝てば、俺とマサルの勝ちだ。
勝ちなん、だが……。
「凪どこ行った?」
凪の姿がどこにも無い。さっきまで確かにいたのに、だ。
え、マジでどこに行ったんだアイツ?
「おーい凪? まだバトル終わってねぇぞ?」
『僕ならここにいるよ』
「へ?」
俺の足下から凪の声が聞こえてくる。
目線を下ろしてみたものの、誰もいない。
えっ……なんっ、はっ?
『あっ、ゴメン。このままだと見えないよね』
その声と同時に凪が姿を現す。
本人の話によれば、メッソンは水分が体に触れると姿を隠すことができるらしい。忍者かお前は。
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