02

「パティスリー・ムクロジ……。ここだわ」

スマホロトムのナビ機能を使いながら、セルクルタウンで大人気だというパティスリーへとやってきた。

お店の近くに差し掛かると甘い香りが漂ってくる。テントの前にはスイーツを買いに来たらしいお客さんの長い列ができていた。

「わぁ〜、美味しそうな匂い!」

「話には聞いていたが、ここまで長蛇の列とはな……」

『マスターは甘いものがお好きなのですか?』

「えぇ、そうね。スイーツと一緒にコーヒーや紅茶をいただくのが格別なの。
……そうだわ。カエデさんとのバトルに勝てたら、このお店のスイーツを買いましょうか。
優慈おじ様も誘って、祝勝会を兼ねたお茶会をしましょう」

『賛成ー! オレは戦えないけど楽しみ!』

ジム戦後のちょっとした楽しみに、みんなの表情にやる気が見え始める。

私も初めてのジム戦なのだし、頑張らなくては……と思っていると誰かから声を掛けられた。

「あら〜? あなたはもしかして昨日の〜……」

「はい? ……まぁ、あの時のパティシエールの方?」

私に声を掛けてきたのは、昨日助けてくださったパティシエールだった。

彼女は私の方へと歩いてきて、"やっぱりそうだわ〜"と言いながらニコリと笑う。

「昨日は大変でしたね〜。カルボウちゃんとコジオちゃんは、あの後大丈夫でしたか〜?」

「はい、お陰様で今は元気ですわ。あの時は助けてくださってありがとうございました」

「いえいえ〜。ジムリーダーとして当たり前のことをしただけですから、お気になさらず〜」

「……え?」



今……この方は何と言ったの?



「あ、あの……。勘違いでしたら申し訳ないのですけれど……。
もしかしてあなたは……カエデさん?」

「はい〜。……あらら〜、そういえば自己紹介がまだだったかしら〜?
私はカエデ。本職はパティシエですけど、セルクルジムのジムリーダーも兼任してるんです〜」

「えーっ!? お姉さんジムリーダーだったの!?」

若葉が驚いたような声を出してカエデさんを見る。

ではこの方が、私が最初に戦うジムリーダーなのね……。

『佑真、ジムリーダーとは何だ?』

「パルデアに8ヶ所存在するポケモンジムのリーダーのことだ。
ポケモンリーグへの挑戦を目指すトレーナーの壁といったところだな」

『なるほど……』

「ウフフ、その制服はグレープアカデミーの学生さんですよね〜?
今の時期は課外授業が始まる頃ですし、この町へはセルクルジムへ挑戦に来た……そんなところかしら〜?」

「え、えぇ……その通りです。それよりも、ご挨拶もせず失礼しました。
私はシオンと言います。それからニャオハの若葉とコジオの佑真、そしてカルボウの陽斗です」

若葉たちもカエデさんへ挨拶をする。

"よろしくね〜"と笑いながら、視線を私へと戻した。

「若葉ちゃんと佑真さんは、擬人化したポケモンちゃんだったんですね〜。
ジム戦は収穫祭が終わってからになっちゃいますけど、今から楽しみだわ〜」

「では……」

「はい〜。シオンさん、あなたの挑戦を受けますね〜。
日程はまた後日、こちらから連絡しますので〜」

"さ、お仕事お仕事〜"とお店へ戻っていく楽しそうな背中を見送る。

初めてのジム戦ということもあって緊張するけれど、今はひとまずお祭りを楽しむことにしよう。


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