04

「さぁ。カルボウも見つかったことだし、朝ご飯にしようか。
簡単なもので悪いけど、腕を振るわせてもらおうかな」

『朝ご飯だー! オレお腹ペコペコー!』

「その前にピクニックセットの準備だ。……お前はその間に身支度をして来い」

「そうね、そうさせてもらおうかしら。
良かったらカルボウも一緒にどう? 見慣れない食べ物ばかりだとは思うけれど」

『いや、俺は……』

「えぇー良いじゃん、せっかくなんだし一緒に食べようよ」

"ほら、こっち座って"と若葉に強制連行されるカルボウ。

レジャーシートの上に座らされると諦めたのか、手際良く調理を進める優慈おじ様を眺め始めた。

「カルボウ、お料理に興味があるの?」

『あ、あぁ……少しな。ポケモンが人間の真似事というのも、おかしな話だが……』

『人間の真似事ねー……。それを言うなら、若葉や佑真だって似たようなものだと思うよ』

『何……? どういう意味だ?』

"ねー、シオン?"というミライドンの声を聞いて、私も自然と頷く。

ミライドンの話が上手く飲み込めていない様子のカルボウを見ていたら、自己紹介がまだだったことを思い出した。

それにカルボウは野生に暮らすポケモンなのだ。"擬人化"のことなんて知る由もないだろう。

「そういえば、私たち自己紹介がまだだったのよね。
改めて、私はシオン。黄緑色の髪の男の子がニャオハの若葉で、あそこの茶髪の男性がコジオの佑真よ。
短い時間かもしれないけれど、仲良くしてあげて」

『ニャオハとコジオ? どう見ても人間にしか見えないが……』

「じゃあ擬人化解いてあげるよ。
佑真ぁー! ちょっとこっち来てぇー!」

「仕方ないな……」

佑真と若葉が隣り合わせで立つと同時に擬人化を解く。

原型に戻った2人を見たカルボウは、ポカンとした顔で目を見開いていて。

その表情が佑真と初めて出会った時を思い出させて、思わず笑ってしまった。

「最後に、あちらでお料理をなさっているのが優慈おじ様。
ご縁があって、今は一緒に行動してるのよ」

「よろしく、カルボウ。……料理に興味があるなら、少し手伝ってもらえないかな?」

『しかし……原型の姿ではできることなんて知れてるぞ』

「そんなに難しいことじゃない。こうやって、オリーブオイルをパンに塗って欲しいんだ」

優慈おじ様がお手本として、ハケを使ってパンにオリーブオイルを塗って見せた。

"それくらいなら……"と言って、カルボウは優慈おじ様の手伝いを始める。

さて、私も座ったままではいけない。ピクニックセットの中から食器やカトラリーを取り出し、テーブルへと並べていった。



「「「『ご馳走様でした』」」」

「はい、お粗末様でした」

全員が手を合わせ、食後のご挨拶をする。

優慈おじ様の作った朝食は、綺麗に完食されていた。

「はふー、お腹いっぱい! ね、シオン!」

「えぇ、そうね。優慈おじ様、ありがとうございます。
とても美味しかったですわ」

「それは良かった。そう言ってもらえたなら、作った甲斐があるよ。
……本当はもう少しちゃんとしたメニューを作ってあげたかったけどね」

「夕飯じゃあるまいし、朝から豪勢にする必要も無いだろ」

『オレはもうちょっと食べたかったなー』

パルデアでは一般的だというパン・コン・トマテに、野菜たっぷりのガスパチョ。そしてメインディッシュのトルティージャ。

優慈おじ様は謙遜なさったけれど、十分朝食に相応しいメニューだと思う。

どれも本当に美味しくて、"もう少し食べたい"というミライドンの言葉も分かる気がした。

けれど、あまり食べ過ぎると太ってしまうかしら……。

『人間の食べ物は初めて食べたが、なかなか興味深い。機会があれば教わりたいくらいだ』

「ハハハ、君の口にも合ったようで何よりだよ」

楽しい朝食の後は、全員でお片付け。

食器用のクリーニングシートで丁寧に食器を拭いて、袋に入れてカバンへしまう。

全てを片付け終えた頃、カルボウが私の袖をクイクイと引っ張った。


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