06
「クマちゃん、甘〜い香りよ〜!」
どこからか聞こえてきた女性の声と一緒に、ハチミツにも似た甘い香りが漂ってくる。
そのかぐわしい香りは辺り一帯に広がり、グレンアルマに従っていたポケモンたちの戦意を削いでいった。
グレンアルマ自身もその香りを嗅ぎ取ったのか、青白い光の玉を消して周囲を見回している。
呆然としていた私の前に、トコトコと歩いてくる1つの影。それは二足歩行の、何とも可愛らしい子グマのようなポケモンだった。
「あの〜、大丈夫ですか〜!?」
「……は、はい! ありがとうございます!」
私たちの元へ駆け寄ってきたのは、1人のパティシエ。……いえ、女性のようだしパティシエールかしら?
その方は私たちとグレンアルマたちを交互に見て、瞬時に状況を察したらしい。
笑顔でありながらも毅然とした表情で間に割って入った。
「ポケモンちゃんたち、大勢で1人を攻撃するだなんておいたが過ぎますよ〜?
……トレーナーさん。ここは私が引き受けますから、ポケモンセンターへ急いでくださ〜い」
「で、ですが……!」
グレンアルマに啖呵を切ったのは私の方なのに……。
この方が巻き込まれる必要なんて無いのに……!
『今は逃げよう、シオン! 今のオレたちじゃアイツには勝てないよ!』
「カルボウちゃんとコジオちゃんを助けたいのでしょ〜? 私とクマちゃんは大丈夫ですから、急いで〜」
「お姉さんたちも気を付けてね! 行こう、シオン!」
若葉にグイッと腕を引かれ、慌てて佑真をモンスターボールに戻す。
私が背中に乗ったのを確認したミライドンは、"飛ばすからしっかり捕まっててよ!"と言ってセルクルタウンに向けて全速力で走り出しすのだった。
「あらあら〜。"お姉さん"だなんて照れちゃうわ〜」
『もう、カエデったら! 今はニヤけてる場合じゃないでしょ?』
「うふふ、クマちゃんもやる気十分ねぇ〜。
それじゃ、甘くてビターなバトル……あの子たちにごちそうしちゃおうかしら〜」
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