04
ゆっくりと町を歩き続けて、郊外の方までやってきた私たち。
ヤヤコマやウパー、パピモッチといったポケモンたちと戯れながら時間を過ごした。
若葉たちも野生のポケモンと遊ぶ時間は楽しかったようで、気が付けば太陽がうっすらと赤みが差していた。
「あら大変、もうこんな時間なの?」
「ホテルに戻らなくちゃね。僕お腹すいちゃった」
『オレもー』
『……待て』
佑真の低い声が聞こえ、思わず彼のいる方へ振り向く。
佑真は一言も話さないまま一点を見つめていたかと思うと、"そこか"と言うやいなや石を投げ飛ばした。
あれは確か、"撃ち落とす"という技だったかしら……。
『ぐっ……!』
茂みの方からくぐもったような声が聞こえ、ガサガサと音を立てながら小さな影が姿を現す。
私たちの目の前に飛び出したのは、赤い色をした小さな子どものようなポケモンだった。
『あのポケモンは……カルボウか?』
「カル、ボウ……?」
初めて聞くポケモンの名前に思わず首を傾げると、佑真はただ一言"炎タイプのポケモンだ"と呟いた。
『カルボウならこの辺りに生息していてもおかしくはないが……。町のすぐ近くに姿を現すのは珍しいな』
「待って。あの子……」
カルボウというらしいそのポケモンをよく見ると、全身が傷だらけで意識も朦朧としているみたいだった。
そして……彼(彼女?)の赤い瞳が、私たちを捉えた。
『お前たちは……誰だ……? 父さんの命令で……俺を捕まえに来たか……?』
「……!」
必死に言葉を紡ごうと口を開いているようだけれど、その声はとても弱々しい。
このままではあの子が危ない。きっと、あぁして立っていることすら辛いはずだわ。
「カルボウ、その傷はどうしたの? 何があったの?」
『……お前たちには、関係な……っ、う……!』
「カルボウ……!」
やっぱり立っているだけでかなりの辛さだったのだろう。
膝から崩れ落ちたカルボウを慌てて抱きとめると、そのまま気を失ってしまった。
今の私にできる治療と言えば、応急処置がせいぜい。ここはポケモンセンターに連れていく方が確実だわ。
「……若葉、カバンを持っていてくれる? 急いでポケモンセンターへ連れていかないと」
「分かった。任せて!」
若葉にカバンを預けてカルボウを抱き上げた瞬間、茂みの奥からたくさんのポケモンたちが姿を現した。
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