01
コジオの佑真が仲間になって、数日が経った。
ここ最近降り続いていた雨も上がり、太陽が燦々とテーブルシティの街を照らす。
私も生物学の授業で色々と基礎知識も付いてきたし、今日から本格的に課外活動に取り組むことを決めた。
「それで、何から始めるかだけど……。
候補としてはセルクルジムに挑戦するか、岩壁のヌシを探しに行くかのどちらかになるのかしら」
スマホロトムのマップと睨めっこしながら、取っ掛りをどうするかをみんなで考える。
うーん……と頭を悩ませる私たちの隣で、ふと佑真が訝しげな声を上げた。
『セルクルジムは分かるが、その"岩壁のヌシ"とやらは何なんだ?』
「ペパーって人が言うには、"秘伝スパイス"っていうのを守ってる強力なポケモンなんだって。
どうしてもそれが欲しいらしくて、シオンに"手伝ってくれないか"って言ってきたんだよね」
『……なら、先にセルクルジムに挑戦する方が良いだろうな。
ヌシがどんな強さなのかは知らんが、トレーナーになったばかりのお前が挑むのは今じゃない。
それに他のジムにも挑戦するつもりでいるなら、"ポケモンジムでのバトル"に慣れておく必要も出てくる』
『オレは戦えないから何とも言えないけど、シオンだって何回かバトルはしたことあるよ?』
『ジム戦はジムリーダーがトレーナーの力量を試す場だ。仲間内でのバトルとは訳が違う』
「トレーナーの力量……」
佑真の話をまとめると−−。
ポケモントレーナーがジムリーダーに認められるためには、ただバトルが強いだけではダメなのだそう。
常に変わり続ける戦況に臨機応変に対応できるかどうかや、トレーナーとそのポケモンがどれだけ強い絆で結ばれているかなどをバトルを通じて見極めるらしい。
「それならきっと大丈夫だよ。僕とシオンは仲良しだもんね!」
『仲が良いのは結構だが、それだけで勝てるほどジムリーダーは甘くないぞ。
そもそも若葉、お前はセルクルジムが何タイプのジムか知ってるのか?』
「知らなーい」
あっけらかんとした若葉の返答に苦笑いが漏れ、佑真はハァ……とため息をつく。
"先が思いやられる"と言っているような雰囲気だった。
『虫タイプだ』
「えっ?」
一瞬、若葉の周りだけ時間が止まったような気がした。
「佑真、今何て?」
『だから、セルクルジムは虫タイプのジムだ。
岩タイプの俺ならともかく、草タイプのお前は相性が悪いはずだが?』
「ええーっ!? 虫タイプ!?」
「わ、若葉……! 部屋では静かに!」
素っ頓狂な声を上げ始めた若葉を何とか宥め、スマホロトムに目を向ける。
確かに……。ネモが書いてくれたのだろうメモ書きには、虫タイプのジムであることがちゃんと書かれていた。
ちなみに当のネモ本人は早速セルクルジムに向かうと言って、早めに出発したようだ。
「えっと、虫タイプに有利なタイプは……」
『炎、飛行、岩だな。できればジム戦前に炎タイプを引き入れたいところだが……』
「炎タイプ……。セルクルタウンに着くまでに出会えると良いわね」
佑真の言う通り、私はまだトレーナーになったばかりなのだ。
ゆっくりと、焦らずに。この子たちと一緒に少しずつ経験を重ねていこう。
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