05

「それにしても、こんな短時間で野生のポケモンと友達になるなんて流石だね。
やっぱりポケモンの言葉が分かると、仲良くなるのも早いのかな?」

「そうなのでしょうか……」

空飛ぶタクシーを呼んで到着を待っている間、ネモと雑談をしながら過ごす。

若葉たちとの合流したを果たしたにも関わらず、ドオーとコジオは一緒にいてくれて。

"乗りかかった船だし、約束は果たすよ"と言ってくれた。

『あぁ、やっぱりそうなんだ。珍しい能力持ってるんだねぇ』

「"やっぱり"って……気付いていたの? 私がポケモンと話せること」

『やけに話の通じるヤツだとは思っていたが……。
まぁ、俺たちの言葉が分かると言うなら辻褄が合う』

意外とあっさり受け入れられてしまったけれど、"珍しい"と言っているからにはやっぱりそうそういないものなのね。

飲み込みが早いというか、適応力が高いというか……。

「それよりも、ありがとう。あなたたちがいなかったら若葉たちと会えなかった。
本当に、感謝しているわ」

『……そうか』

『あれぇ? コジオってば照れてるぅ?』

『別に照れてはいない。ただ……今まで礼なんて言われたことが無かったから、面映ゆいだけだ』

『それを"照れてる"って言うんだよぉ』

照れている(らしい)コジオを見て、ドオーがからかうように笑う。

この子たち、本当に仲が良いのね。

「それでね、コジオ。その……私たちと一緒に来て欲しいなって……」

『何……?』

私の言葉に、コジオが微かに驚いた声を出す。

表情はよく分からないけれど、彼の雰囲気から動揺しているのが少しだけ感じ取れた。

「も、もちろん無理に承諾して欲しい訳ではないのよ。ドオーと仲が良いのは見ていれば分かるし。
……でもあの時あなたに出会ってなければ、私は何もできないまま誰かが見付けてくれるのを待ってるだけだったかもしれない。
あなたがいてくれて本当に心強かったの。だからこそ私は、改めてあなたとお友達になりたい。
コジオ……私たちの進む道を、一緒に歩んでくれませんか?」

『……』

すぐには口を開かなかった。どうするべきか迷っているようにも見えて、私もつい固唾を飲む。

短いとも長いとも取れる沈黙を破ったのは、なんとドオーだった。

『行っておいでよ、コジオ』

『ドオー……』

『シオンは君を必要としてくれてる。だったら迷うことないじゃない』

『俺は……』

『コジオ、大丈夫だよ。シオンはきっと"君自身"を受け入れてくれるから』

ね? とドオーがコジオの背中を押す。

コジオは数秒の沈黙の後、"フゥ……"と小さく息をついた。

『分かった。お前と一緒に行ってやる』

「本当……?」

『お前はどこか危なっかしい。1体くらいは俺みたいなのがいる方がマシだろ』

「うっ……世間知らずなのは自覚があるけれど……。
ありがとう、私を選んでくれて。今日からあなたは私たちの仲間よ」

ベルトから空のモンスターボールを取り外し、スイッチを押す。

そしてコジオの頭にそっと当てると、赤い光と一緒にボールへ吸い込まれていく。

掌の上でコロコロと揺れた後、カチッという音が鳴った。

「新しいポケモンのゲットおめでとう、シオン! 次会った時は絶対バトルさせてね!」

「えぇ、機会があればぜひ。出ておいで、コジオ」

モンスターボールから出てきたコジオ。

これで正式に私たちの新しい仲間になったのだ。

「コジオ……いえ、"佑真"。これからよろしくね」

『……ゆうま?』

「新しい名前は嫌?
"自分が大切に思う人たちを助け、守ることができるように"……。そんな願いを込めたんだけど、気に入らなかったかしら?」

『いや……それで良い』

『うん、良い名前だね。初めてできた友達……大切にするんだよ、コジオ』

『……あぁ。ドオー、お前には世話になった。
そっちも、体壊したりするなよ』

『もちろんだよぉ。あぁでも、たまには顔を見せに来てくれると嬉しいなぁ』

ドオーとコジオの会話を聞きながら、若葉たちと目を見合わせて笑い合った。

到着した空飛ぶタクシーに乗り込んで、グレープアカデミーへ向けて進む。

茜色に染まった空は、佑真の門出を見送っているかのような暖かさを感じた。


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