02

「え?」

さっきまでののんびりとした口調が嘘のように、真剣な声音になったドオー。

彼の質問の意図は読めないけれど、私はコジオに抱いた印象を素直に口にした。

「そうね……。少しぶっきらぼうだけど、優しい子だと思うわ。
ケガをした私のことだって知らん顔できたはずなのに、一緒にいてくれるし。
いきなり塩を掛けられた時はビックリしたけど」

『そっか……。君にはあの子がそう見えてるんだね』

「ドオーは違うの?」

『僕もあの子は優しい子だと思ってるよ。ただ……元々の口数の少なさとあの雰囲気が災いして、周囲から孤立しちゃってるんだ』

確かに……ドオーの言う通り、自分から積極的に他者と関わろうとする性格には見えなかった。

ドラメシヤたちがコジオに詰め寄った時も、何も言わずジッとしていたくらいだ。反論する様子も、特に無かった。

「そういえば……"自分のことを理解してもらおうとは思わない"って……」

あの時、確かにコジオはそう言っていた。

周囲から孤立してしまっている上に、自分から壁を張っているようにも思える。

『さっきは"素直じゃないな"って言ったけど……僕の目にはどこか割り切っちゃってるように見えるんだよ』

「割り切る……?」

『生来の性格は変えられない。自分の言動が原因で冷たいヤツって思われることも分かってる。
だから、"理解されなくても仕方ない"……そう思ってるのかもね。あえて相手と距離を取ってるって感じ』

「そんな……」

彼が今までどんな風に暮らしてきたのか、私には分からない。

でも周りに誤解されたままで、自分も壁を作ってしまうのは……悲しいことなのではないかと思う。

『君と一緒にいるのを見た時、すごく驚いたんだ。常に周りと距離を取ろうとするあの子が誰かの……しかも人間のそばにいるなんて、ってね』

「で、でもコジオと会ったのは偶然で……」

『本当に偶然なのかな?』

ドオーのつぶらな瞳が強い光を帯び、私をジッと見つめる。

小さいながら何もかも見透かしそうなその色に、思わず息を飲んだ。

『あぁゴメン、責めてるわけじゃないんだ。
僕が言いたいのは君たちの出会いは偶然なんじゃなくて、"必然"だったんじゃないかってこと。
君もコジオも、"出会うべくして出会った"。きっかけはどうであれ、そういう運命だったんじゃないかって僕は思うんだ』

「出会うべくして……」

そう、なのかしら……?

たまたまこのエリアに私たちが来て、たまたまドラメシヤたちのイタズラでここに落ちて。そしてたまたまコジオと出会った。

これが全て必然だというのなら、どんな意味があるのだろう?

『さっきも言ったけど、コジオは本当は優しい子だよ。
でも沼地付近で暮らすポケモンたちにはあの子を怖がる子が多くて、中には"コジオがいると空気が悪くなる"ってあの子を悪く言う子も少なからずいる』

「……」

『だから君があの子のことを"優しい"って言ってくれて、少しホッとしてるんだ。
僕以外にもあの子を受け入れてくれる子がいる。無愛想で素っ気ない態度を取られても、君はあの子のことを怖がらずにいてくれる。
もしかしたらこの出会いは一時的なものなのかもしれないけど……。君だけはあの子の"不器用な優しさ"を忘れないであげてほしいな』

ドオーはそれだけ言うと、元のぽやんとした雰囲気に戻った。

"そういえばお腹空いたなぁ"と言う声は、さっきまでとは別人みたい。うーん……どっちが本当の彼なんだろう。


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