07



『……』

『『『……』』』

「……」



突然始まった、コジオとドラメシヤたちの睨み合い。

何故こんなことになったのか理解が追いつかないまま、少しだけ無言の時間が流れる。

「えっと……彼がどうかしたの?」

『あー、そういうことか。君、そこのコジオに塩かけられたでしょ?』

「え、えぇ……。かけられた、けど……」

『"清めの塩"』

「えっ?」

『ソイツの特性だよ。全部の状態異常を防ぐ上に、ボクたちゴーストタイプの技を半減させるんだ。
君からボクたちの苦手な雰囲気がすると思ったら、やっぱりか……』

状態異常……。そういえば、ジニア先生の講義で習ったかしら。

毒や麻痺、火傷、眠りに混乱……あとは、氷状態もあると言っていた。確かに全部防ぐことができるのはすごいかもしれない。

それに塩は除霊として体に振りかけたり、魔除けとして持ち歩く人もいる。ゴーストタイプの彼らにとって、塩はあまり好ましくないのだろう。

『ねぇ君、1つ教えといてあげる。
ソイツと仲良くなろう、なんて思ってるならやめといた方が良いよ』

「えっ、どうして?」

『ソイツ、すっごい無愛想なんだよね。ただでさえ表情が分かりにくい上に、言葉もキツい。
このエリアに住むポケモンの中にはソイツを怖がる子も結構いるんだ』

『人間の言葉で言うなら……"協調性が無い"ってやつ? まぁとにかく冷たいヤツなんだよ』

『っていうかポケモンの友達もいないお前に、人間の友達なんてできるわけないじゃん。
ホントお前の考えてることって意味分かんないよね』

な、なんか一触即発の空気になってきている気がする……。

野生のポケモンたちって、ここまで仲が悪くなるものなの?

『……別に、俺のことを理解してもらおうなんて思っちゃいない』

『お前のそういう態度がムカつくって言ってんの! まったく、ドオーがいなかったらさっさと……』



『はぁい、それまでー』



コジオとドラメシヤたちの言い合いに割って入る、のんびりとした声。

その声の主は、茶色くて丸みを帯びた体の大きめなポケモンだった。

逆に手足は小さくちょこんと生えていて、そのアンバランスさがどこか可愛らしく感じる。

『ケンカはダメだよぉ。色んなポケモン、色んな性格の子がいるんだから』

『でもドオー……!』

『コジオが何か悪いことした訳じゃないんでしょ? 気に入らないからって強く当たるのは、違うと思うなぁ。
僕から話をしておくから、今は怒りを収めて。ね?』

小さくてつぶらな瞳が、キュルンと輝く。

ドラメシヤたちは"ドオーがそう言うなら……"と言って、スーッと姿を消した。

消えていく間も彼らはコジオを苦々しげな顔で見ていて、その様子を見た私の胸がチクリと傷んだ。


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