05

出発前のおやつタイムを終えて、南5番エリアの方角へ向かう。

ミライドンに乗っての移動はとても快適で、足腰の疲れを気にしなくて良いので助かった。

南1番エリアに差し掛かったところで一旦休憩を取ることにして、レジャーシートを広げて海を眺めた。

「潮風が気持ち良い……。
あ、ミライドンは大丈夫? 錆びたりとかは……」

『大丈夫だよ。オレ、こう見えて電気・ドラゴンタイプだし』

「そ、そうなの……?」

メタリックな見た目をしているから、てっきり潮風はダメなのだと思っていた。

鋼タイプ? になると、話が変わってくるのかしら?

『ねぇねぇシオン、僕あっち見てきても良い!?』

「良いけど、あまり遠くには行かないようにね」

はーい! と言って駆け出した若葉を、"あっ、オレも行くー!"とミライドンが追いかけていく。

初めて出会ってから今日までの間ですっかり打ち解けたみたいだし、どこか兄弟のようで微笑ましくなった。

高い崖のような位置に立って、遠くに見える海を眺める。

間には沼地のような場所もあって、パルデアの雄大な自然を肌で感じた。

(あれが、海……)

写真でしか見たことが無かったから、こうして自分の目で海を見るのは今日が初めて。

遠くからでも波の音が聞こえてくるような気さえする。もっと近くに行ってみたいな……。

『ねぇねぇ、君』

「は、はいっ!?」

どこからか聞こえてきた、若葉たちのものとは違う声。

振り返って辺りを見回してみたけれど、声の主の姿は無かった。

でもクスクスと笑う声がそこかしこから聞こえてくる。

「……ど、どなた?」

『君、こんなところに1人で何してるの?
ボーッと突っ立ってると後ろから脅かされるよ? ……こんな風にさ!』

その声と同時に現れた、複数の小さな影。

ポケモンだろうと判断できた時にはもう遅く、私はつい後ろへ後ずさってしまった。

『あっ、ヤバっ! それ以上退がったら……!』

「えっ、あっ、キャアアア!」

後ろへ踏み出したその位置に地面は無く。

足を踏み外した私は、そのまま崖下へと滑り落ちていった。


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