02

食堂で朝ご飯を食べて、足早にグラウンドへ向かう。

到着した頃には既に多くの学生が集まっていて、課外授業の始まりを今か今かと待っているようだった。

「皆さん、集まりましたかね……。それではこれから、課外授業の説明を行います。
課外授業のテーマは"宝探し"! 皆さんにはこのパルデアを旅して、自分だけの宝物を探していただきます」

「宝探し……」

そういえば、前にネモからそういうイベントがあるって聞いたっけ。

自分だけの宝物……その言葉に少しだけ胸が高鳴る感覚がした。

それに自分の脚で歩くと言うことは、授業では習わないことを見聞きできるということだ。

グレープアカデミーに通い始めてポケモンのことやバトルのこと、パルデアの歴史……色んなことを学んだ。

今度は外の世界に目を向け、見聞を広めて欲しい−−クラベル校長はそう力説する。

「それぞれがそれぞれのポケモンたちと共に歩き、共に考え……自分だけの宝物を見付けて帰ってきてください!
課外授業を通して大きく成長した貴方たちに再びご挨拶できることを楽しみにしておりますよ」

クラベル校長のその言葉に、学生たちが一気に沸き立つ。

「パルデアの大穴への立ち入りは危ないので校則違反ですからね!
……それでは宝探し開始! 気を付けて行ってらっしゃい!」

こうして朝礼は終わり、課外授業・宝探しの始まりを告げるのだった。



1度ネモと別れ、私はジニア先生を探す。

職員室や生物室、食堂と順に訪ねて見たけれど、彼の姿はどこにも無かった。

「どちらにいらっしゃるのかしら……」

エントランスに戻ってきてはみたけど、どうやらここにもいらっしゃらないみたい。

「おやぁ? シオンさん、おはようございまぁす。
誰かと待ち合わせですかぁ?」

後ろから声を掛けられて振り返ると、そこにはジニア先生の姿があった。

探している間にすれ違っていたのかしら。

「ご機嫌よう、ジニア先生。お聞きしたいことがあって探しておりましたの。
あの、今までどちらに?」

「僕を探してたんですねぇ。家庭科室でサワロ先生にご馳走になってたんですよぉ」

家庭科室は盲点だったわ。食事をなさっているなら食堂だろうと思い込んでしまっていたみたい。

サワロ先生は……確か家庭科担当の、紳士的な先生だったと思う。

「そうだったのですね。どうりでなかなか見付からないわけですわ」

「アハハ、すみません。それで、僕に聞きたいことって何ですかぁ?」

「実は……」

私はジニア先生に、今朝方あったことを話した。

若葉が人間の姿になったと聞いた彼は驚いた顔をして、その後すぐに目をキラキラさせながら満面の笑みを浮かべた。

「えぇっ、本当に!?
ニャオハが人間の姿になるところを見せてもらっても良いですかぁ!?」

興奮気味なジニア先生に気圧されてしまい、若葉の承諾を得てモンスターボールから出す。

人間の姿になった若葉を見た彼は、その笑みを更に深くした。

「すごい……。すごいですよシオンさん!
これは"擬人化"です!」

「ぎ、擬人化……ですか?」

小説とかで人間ではないものを人間であるように描写する、"擬人法"は聞いたことがあるけれど……。

困惑する私をよそに、ジニア先生は若葉を観察しながら周囲をグルグルと回っていた。

「ポケモンが擬人化することは聞いていましたが、まさか自分の目で見られるとは思っていませんでしたぁ。
しかもこんなに短期間で擬人化するなんて、シオンさんは本当にすごいです!」

「あ、あの……話が見えないのですが……」

すっかり興奮してしまったジニア先生をなんとかなだめて、詳しい説明をお願いした。

彼の話をまとめると、ポケモンの中には人間の姿になる……つまり擬人化する子が稀にいるという。

野生のポケモンにはあまり見られない現象で、擬人化しているポケモンもトレーナーのいる子がほとんどなのだそう。

「擬人化は報告例がとーっても少なくて、詳しいメカニズムは解ってないんです。
トレーナーとポケモンの絆が大切ってことが、最近の研究でようやく発見されたばかりでぇ……。
アカデミーの生徒さんの中でポケモンが擬人化したのは、シオンさんが初めてです」

ニャオハは、君のことが大好きなんですねぇ−−。

屈託のない笑顔でそう言われて、つい頬が緩むのを感じた。


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