02

今日の授業は午前のみの予定になっているということだったので、エントランスホールの本を読んで過ごすことにした。

ネモは生徒会の会合があるらしくそっちに行ってしまったから、パルデアに来てから初めての私たちだけの時間だ。

「……色々な本があって、どれを読むか迷うわ」

『僕はボールの中で寝てるから、終わったら起こしてね』

『オレも少し寝てようかな』

(昨夜も十分寝ていたような気がするけれど……ん?)

とある本棚に陳列されている、濃い紫色の本。

"バイオレットブック"と背表紙に書かれたそれを手に取ってみる。

表紙にはミライドンらしきイラストが描かれていた。

(珍しい書名……。うん、これを読んでみようかしら)

空いている座席に座り、表紙をめくる。

この本の作者はヘザーという人物で、200年ほど前に活躍した博物学者と書かれていた。

自分の書籍を出版するところを見ると、作家の一面もあったようだ。

書かれている内容は"パルデアの大穴"の奥深く……"エリアゼロ"と呼ばれる場所についてのもの。

彼が実際に目の当たりにしたという様々な事柄が綴られていた。

大穴の中で見つけた不思議な地上絵らしきものや、ヘザー自身が書いた覚えがないというメモ書き。

更には彼がエリアゼロで見た謎のポケモンのスケッチもあった。

明確にはポケモンとは違うらしい、未知の生き物……。

言い様のない不気味さを感じさせながらも、ページをめくる手を止められない。

(それに……)

私はこの本をどこかで見たことがあるような感覚に陥っていた。

どこで見たのかも、何故そう感じたのかも全く分からないけれど。

そもそも今までポケモンとは無縁の世界にいたのだし、エリアゼロはおろか大穴のことすら何も知らないのだ。

(気のせい……よね。うん、きっとそう)

迷いを断ち切るように小さく首を振り、再び読み進めていく。

最後のページに書かれていたのは、光を放つ円盤のような何かについての記述だった。

所々文面が抜け落ちているけれど、内容を読み解くことに支障は無い。

(ポケモンって、この世界に何種類いるのかしら?
私が知っているのは、まだ片手で数えられるくらい。……お勉強、頑張らなきゃ)

自分の胸の内でそう決意を固め、私は校内の散策をすることにした。


[*prev] [next#]






TOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -