02



「若葉、アクロバット!」

「シ、シルシュルー!?」



シルシュルーというらしいポケモンが目を回して倒れ、女学生が慌ててモンスターボールに戻す。

若葉から毒タイプは相性が悪いって言われたけれど、何とか勝てて良かった。

「な、何なのこの新顔ちゃん。マジで強いんだけど……」

ネモやペパーさんとバトルした時は、緊張で肩に力に入っていた。

でも今回は、不思議と落ち着いて戦えた気がする。

あの時のネモの言葉は、あながち間違いではなかったみたい。

「ちょっと、ちょっと! 何やってんのー!」

「ネモ!」

大声を上げながら駆け寄ってきたのは、たった今思い浮かべていた彼女本人だった。

スター団の2人組が"ゲッ、生徒会長……!"と零したのが聞こえてくる。

……そうだった。ネモは生徒会長だし、上手くこの場を収めてくれるかもしれない。

しかし、彼女の口から飛び出してきたのは思いも寄らない言葉だった。

「もう、ダメだよシオン!
ポケモンバトルするなら 私 と ! でしょ?」

「ええっ!? あの、今はそういう場合では……!」

それはもうニッコリとバトルの話をするネモに、私は慌てて状況を説明する。

事の詳細を聞いたネモの琥珀色の瞳が、スター団の2人組を捉えた。

「本当だ、よく見たらスター団! また強引な勧誘してる!」

「あ、はい……どうも」

"また"ということは……加えて否定しないということは、以前にも同じことがあったのか。

「なるほどね。本来なら生徒会長としてこの騒ぎを収めるべきなんだろうけど……。
せっかくだから、シオンが超・マル秘アイテムで解決しちゃえ!」

「マル秘アイテム……? って、私がするのですか!?」

混乱する私を前に、ネモが"はい、これ!"と何かを手渡す。

手に握らされたそれは黒いモンスターボールくらいの球体……テラスタルオーブだった。

「ネモ、まさかマル秘アイテムというのは……」

「そう、テラスタルオーブだよ。
本当は専用の授業を受けないと貰えないんだけど、私が推薦しておいたから!
まぁ、物は試し! バトルしながら使い方を知っていこーっ!」

"専用の"どころか、まだ1度も授業に出席していない学生に持たせても良い物なのかな……。

しかしこのままバトルをして、オーブを持たない状態でテラスタルを使ってしまえば大騒ぎになるかもしれない。

それを考えれば、オーブを使用できるのはありがたいことではあった。

「若葉、連戦になるけど大丈夫?」

『大丈夫。まだまだ戦えるよ!』

「あれ? この流れはテラスタルのお試しにされる感じですか……?」

「嫌なら私と勝負だよ」

「ぐぬぬぅ……。新顔の方ならまだ勝つチャンスはある……!」

流石はチャンピオンランクの生徒会長……。

少し目を細めただけなのに、有無を言わせぬオーラを感じた。



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