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「……ハァ……ハァ……。の、上り切ったしら……?」



グレープアカデミーへと伸びる階段を上り初めて数分。

早くも私の脚は限界を訴え始めていた。

(そういえば、終始歩いての登校は初めてだったわ……)

元の世界にいた時はじいやが車で送迎してくれていたのだ。他の人に比べれば体力は無いに等しい。

毎日この階段を上り下りしなければならないと思うと、少し頭が痛くなる気がした。

『お疲れ様―って言ってあげたいけど、まだ半分だよ』

「えっ、まだ半分もあるの……?」

若葉の言葉を聞いて、反射的に目線を上げる。

目の前にあと数十段はあろうかという階段があった。

今私のいる位置はちょっとした広場になっているらしく、敷地の中央にはバトルコートが設置されている。

しかし普段は使われないのか、他の学生たちを見てもスタスタと通り過ぎる人が多かった。

『オレが外に出られたら背中に乗せてあげるのになー。
……って、あそこ何か騒がしくない?』

ミライドンが聞き付けた音……というより、あれは誰かの声だ。

そちらの方へ目線を向けると、眼鏡を掛けた学生が星型のゴーグルの2人組に声を掛けられているところだった。

「ちょっとー。こちとら勧誘ノルマあるんだから、さっさとスター団に入りなさいよ!」

「えと……困ったな」

一方的にまくし立てるように話し掛けているところを見ると、どうにも穏やかな内容ではないらしい。

現に眼鏡の学生は困ったような表情で相手を見ている。

ガラの悪そうな2人組だけど、眼鏡の学生をあのまま放っておくのも偲びなくて……。

気付けば私は彼らのいる方へ歩を進めていた。

「お待ちなさい」

突然声を掛けられたことに驚いたであろう3人の視線が集まる。

よく見ると星型ゴーグルの2人組は、制服を思い切り着崩していた。

もしかして、あれが"不良少年"というものなのだろうか?

「ん? スター団に何か用?
入団希望なら後にしてくれない? 今お話中なのでね!」

「先程からあなた方のやり取りを聞いていましたが……。こちらの方がお困りなのは誰が見ても明白です。
本人の意思も聞かず、自分たちの要求だけを強引に通そうとするだなんて……。
そのような身勝手を見過ごす訳にはいきません」

キッパリとそう言い放つ私を見た2人組が、少しだけたじろぐ。

しかし次の瞬間には開き直ったように口を開いた。

「へ、へぇ? でもあたしらにそんな口聞いて良いの?
あたしら、泣く子も笑うスター団! もちろん知ってるよね?」

「いいえ、知りません。それに、泣く子も"黙る"の間違いでは?」

「なっ!? もう、何なのよ君まで!
せっかくスター団に入ったのに、こんな扱い底辺じゃん!」

女学生は私の発言が気に入らなかったのか、突然その場で地団駄を始めた。

とはいえ、実際に知らないのだから嘘はついていない。

今の状況で分かるのはあの2人組が"スター団"という組織に所属しているらしいことと、彼らの強引な勧誘を受けた眼鏡の学生が困っているということ。

正直関わり合いになりたくはないけれど、誰かを困らせているのなら話は別だ。

「ナメられっぱなしじゃ、団の面目丸つぶれ! 勝負するっきゃなくない?」

「そ、それもそうね。アンタは最初の眼鏡を見張ってて!
生意気な新顔ちゃんは、あたしがお星様にさせちゃうわ!」

「……良いでしょう。その勝負、お受けします」

スター団を名乗る女学生とのバトルが始まった。



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