03

「えっ……な、何!?」

「わっ!? え、どうしたの!?」

止めたくともその方法なんて知る訳もなく、光の粒子がどんどん集まってくる。

一体、何がどうなっているの?

『シオン!』

大きな声で私の名前を呼ぶ若葉が飛び込んでくる。

慌てて彼を受け止めると同時に、目を開けていられないほどの閃光が走って弾けた。

光が収まったのを感じて目を開ける。そして腕の中にいる若葉の姿を見て驚愕した。

「……わ、若葉!?」

端的に言うと、若葉は姿が変わっていて。

小さなその体はまるで宝石のように煌めき、頭には花を模したクリスタルが乗っていた。

「これって……まさかテラスタル!?」

さっきまでの楽しそうな表情から一転、本当に驚いている顔をしたネモと目が合う。

この世界に来てからというもの、不思議なことだらけで頭が追い付かない。

「ちょっと思いがけない展開だけど、これはこれでアリかも!
さぁ、バトルを再開しよっか!」

「私は頭がついて行かないのですが!?」

『ほんとブレないねぇ、ネモは』

今起きた現象が本当にテラスタルなのであれば、何故私はやり方すら分からないはずのそれを実現できたのだろう。

ネモがパモをテラスタルさせていたのを見る限りでは、あの黒いボールのような道具が必要なはず。

なのに、何故……?

「色々と思うところはあるかもしれないけど、今は私とのバトルに集中してね!
パモ、電光石火!」

「えっ、は……はい! 若葉、木の葉で迎え撃って!」

猛スピードで接近してきたパモの体を、凄まじい威力の木の葉が吹き飛ばす。

背中から地面に落ちたパモは目を回していて、ガラスが割れるような音と一緒に元の姿に戻る。

バトルを終えた若葉も、まるで空気中に溶けていくようにクリスタルが消えていった。

呆然としている私を若葉が心配そうに見上げている。

腕に抱き上げて労うと、嬉しそうに喉を鳴らした。

私を呼ぶネモの声に振り返る。目の前に彼女の満面の笑みが写った。

「すごいよ、シオン! オーブ無しでテラスタルを使うなんて、どうやったの!?」

どことなく……というか明らかに興奮している様子のネモに、"分からない"と零す。

私の言葉に気分を害するでもなく、"そっかぁ"とだけ帰ってきた。

「でも、実りのある良い勝負だったよ!
本来テラスタルはテラスタルオーブを使うものだから、後で何とかしてあげる。
……ちょうどポケモンセンターあるし、ポケモンたちを休ませよっか」

この世界の医療関係者だというジョーイさんに若葉を預ける。

しばらくして元気になった若葉をボールに戻し、私たちはテーブルシティへの門をくぐったのだった。


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