07

「よし! 行け、ホシガリス!」

「若葉、お願い!」

若葉を繰り出す私に対し、ペパーさんはホシガリスというポケモンを繰り出してくる。

リスのような見た目をしていて、膨らんだ頬がどこか愛らしい。

「ヤな奴のこと思い出しちまった。落とし前……付けてもらうぜ!
ホシガリス、体当たりだ!」

「か、かわして!」

若葉が軽やかなステップで相手の攻撃をかわし、すかさず引っ掻いて攻撃する。

「それなら次は噛みつくだ!」

ホシガリスが前歯を光らせながら猛スピードで走ってくる。

近付かれる前に何とかしなくちゃ!

「えっと……木の葉で迎え撃って!」

無数の木の葉がホシガリスの体を包んで巻き上げる。

地面に叩き付けられたホシガリスは、足に力を入れて何とか立ち上がった。

「もっかい体当たり!」

「これで決めます……! もう1度木の葉!」

若葉の繰り出した木の葉を真正面から受けたホシガリスが目を回して倒れる。

それを見たネモの"それまで!"というコールが響いた。

「ホシガリス戦闘不能、ニャオハの勝ち!
……ってことで、シオンの勝ちだね!」

ナイスファイト! と激励してくれたネモにお礼を言って、私のところに駆けてきた若葉を労った。

「ちょっとはやるみたいだな。……やっぱ捕まえたばかりのポケモンじゃ、話にならねぇか」

ペパーさんは"コレ持ってけ"と言って、私の手に何かを握らせた。

「これは……モンスターボール、ですよね?」

「あぁ、ミライドンを制御するモンスターボールだ」

「だから何でそんなの持ってんの?」

ネモの質問に答えることも無く、彼は小さく"やっとボール手放せたぜ"と呟く。

"じゃあな"と言うなり走っていったペパーさんに、"ちゃんと学校来なよー!"とネモが叫んだ。

「……おかしな奴。というかシカトしすぎじゃない!?
ミライドンのことも何か知ってそうだったし、今度会ったら勝負して問い詰めてやろうね!」

「勝負までしなくても良いと思いますが……」

ネモの言葉に苦笑いを零しながら、ペパーさんが走って行った方向を見やる。

私も彼に色々と聞きたいことはあるけれど……正直に言って、初対面の印象は良いものではなかった。

ペパーさんの名前を呼ぶミライドンの声が、寂しそうに響く。

「この子のボールを譲られてしまいましたし……。
ミライドン、私と一緒に来てくれますか?」

『……うん、良いよ。
シオンが良い人なのは分かったし、戦えないオレでも良いって言ってくれるなら』

「もちろん。これからよろしくね」

ミライドンの入ったボールが小さくなるのを確認して、ポケットにしまった。

「あっそうだ、灯台! 上から学校見るよ!」

灯台の中にあるハシゴを登っていくネモに続いて、私もゆっくり登る。

1番上まで登ると、眼下にパルデアの雄大な景色が広がっていた。

「シオン、見て! あそこに見えるのがテーブルシティ!
ボールの付いてる大きな建物が、私たちの学校なんだ!」

ネモの指さす方を見ると、確かに大きなモンスターボールの付いた建物が立っていた。

あれがグレープアカデミー……私がこれから通う学校なのだ。

「どう? 灯台からの景色、スッゴイでしょ!」

「はい。風も気持ち良いですね」

「それじゃあ改めて……パルデア地方へようこそ、シオン!
まずはこの近くのプラトタウンを目指しましょー!」

テーブルシティまでの道のりはまだまだ長い。

今は若葉やミライドン、ネモと一緒にこの通学時間を楽しもう。


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