03
「ところで、あなたの名前は何というの?」
腰を落ち着けられるところまで移動して、大きな岩の上に座る。
私は紫色の子に事情を聞くべく、まずは名前を聞いた。
『名前? ラボの人たちからは"ミライドン"って呼ばれてたけど……』
ミライドン……それがこの子の、ポケモンとしての名前なのね。
「あ、自己紹介がまだだったわよね。
私はシオン。この子はニャオハの若葉」
『よろしくー』
『シオン……シオン……。うん、覚えた!
若葉もよろしく!』
軽く自己紹介を済ませ、何故砂浜で倒れていたのかを聞いた。
聞けばこの子はエリアゼロという場所から逃げ出し、お腹を空かせて倒れていたところをデルビルに襲われたらしい。
あの子たち、デルビルっていうのね……。
『オレ、この上にある灯台に行かなきゃいけないんだ。ペパーに会わなくちゃ』
「ペパー?」
誰だろう? この子の知り合いなのは分かるけれど……。
『それより、シオンも上に行くんだよね?
……うん、今ならいけるかも』
「えっ、いけるって何が……キャッ!?」
ミライドンの体が眩い光を放ち、大きく弾ける。
目を開けた視界に入ってきたのは、さっきまでとは違うミライドンの姿だった。
『上に行く道はこっちだよ。着いてきて』
「ま、待って! 行きましょう、若葉!」
慌てて若葉をモンスターボールに戻し、宙に浮いたまま移動するミライドンの後を追った。
薄暗い洞窟の中を、ミライドンと一緒に進んでいく。
スマホロトムに搭載されているライトで道を照らしながら、ひたすら足元に気を付けて歩いた。
ところどころで苔のような植物が光っているのが、少し幻想的な場所だ。
「あっ、いた!
シオン、大丈夫!? ケガとかしてない!?」
突然上の方から聞こえた声に驚きながら見上げると、ネモが私たちのいる場所を見下ろしていた。
「は、はい! 何とか大丈夫です!」
「良かった……! 本当に心配した……!」
『? シオン、あの子知ってるの?』
不思議そうに首を傾げながらそう聞いてくるミライドンに、友達だと答える。
彼はポツリと"そっか……"とだけ返した。
「ごめんね、シオン! 私が声の出処を探そうなんて言ったから……。
とにかく、どうにか上まで登ってきて! 近くに来てくれたらポケモンの技で引っ張り上げるから!」
「分かりました! ……行きましょう、ミライドン」
『そうだね』
再び上に通じる場所を目指して移動していく。
しばらく歩くと数匹のポケモンたちが姿を現した。
あの子たちって、さっきミライドンが言ってた……!
(確か……デルビル!)
デルビルたちは横1列に並んで、私たちの行く手を阻んでいる。
ここを通れなければ上には戻れない。
(どうしたら……)
目の前のデルビルたちに気を取られるあまり、私たちは気付かなった。
後ろから静かに忍び寄ってくる、1つの影に……。
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