01
「ネモお嬢様、行ってらっしゃいませ」
「うん、行って来ます!」
「シオンお嬢様も、良いスクールライフを」
「はい、ありがとうございます」
この家のお手伝いさんだという2人に見送られ、私たちはグレープアカデミーがあるというテーブルシティへと出発した。
クラベル先生から"入学手続きが完了した"と連絡をいただいたのが昨日のこと。
資料と一緒に届けられた制服に身を包み、コサジの小道と呼ばれるらしい道を2人で歩いた。
「これから一緒に勉強できるの、楽しみだねー!」
「はい。若葉と仲良くなるためにも、しっかり学ばなくては」
「大丈夫だよ! どの先生の授業も分かりやすいし」
木々に囲まれた道を進んでいくと、次第に前方の視界が開けてくる。
心地の良い潮風の吹く坂道の先に灯台が見えた。
「あっ、そうだ! シオンって、まだモンスターボール1つしか持ってないんだっけ?」
「そう……ですね。若葉のボールだけだったかと。
それがどうかしましたか?」
「トレーナーは最大6匹まで自分のポケモンを連れ歩くことができるんだ。
これから新しい仲間が増えるかもだし、シオンにも分けてあげるね」
そう言って5つのモンスターボールを取り出したネモに、お礼を言って受け取る。
"ボールベルトに装着するんだよ"と教えてもらい、それに倣った。
ポケモンの捕獲(ゲットと言うらしい)のやり方を聞きながら小道を歩いていく。
灯台まであと半分という距離のところで、どこからか"あっち行け!"という声が聞こえてきた。
「今のは……?」
「知らない鳴き声……強いポケモンがいたりして!
ねぇ、声の出処を探してみようよ!」
「えっ!?」
ネモが"鳴き声"と言ったということは、さっきの声はポケモンが発したものということになる。
興味が無いと言えば嘘になるけれど……もし、あの声の主がとてつもない強さの持ち主だったら……。
とてもじゃないけれど、私と若葉では太刀打ちできない。
「ちょっと見てみるだけだって!
でもこの辺りは危険な洞窟もあるから、そこには行かないように!
スマホロトムの安全機能もあるけど、崖には気を付けてね」
「声の主を探すのは確定なのですね……」
こうなってしまっては仕方ないと思いながら、ひとまず海のある方まで歩く。
すると眼下に広がる砂浜に、何かが見えた。
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