05
美味しいお食事とお風呂をいただいて、ネモさんのお部屋で談笑する。
彼女は約束通りに新しいスマホロトムを用意してくれ、ポケモン図鑑というアプリも入れてくれた。
パルデアに生息しているポケモンのあらゆる情報が収録されているそうで、自分のポケモンが覚えている技やステータスも確認できると教えてもらった。
……あと、アプリの開発者がジニアさんであることも。
ふと彼女の言葉の節々に育ちの良さを感じるのが気になり、私はそれを口に出して問い掛けた。
「あの、1つ気になることがあるのですが……」
「何?」
「ネモさんはもしかして、財閥のご令嬢でいらっしゃるの?」
私の問いに対して、彼女は目を見開く。
すると"あー……"と言いながら頬を掻いた。
「私のお父様、スマホロトム会社の役員なんだよね。お嬢様、なんてガラじゃないんだけどさ。
そういうシオンもお嬢様だったりするんじゃない? 言葉遣いとか、立ち振る舞いとか上品だし」
「私も似たようなものです。
……あ、ニャオハに名前を付けてあげなくては」
「ニックネームかぁ。良いね、"自分のポケモン"って感じ!」
「ネモさんや、他の方は付けませんの?」
「私は、ちょっとネーミングセンスがね……。
付ける人も中にはいるけど、基本は種族の名前で呼ぶ人が多いよ」
どんな名前にするの? と聞かれながら、膝に乗って眠っているニャオハの頭を一撫でする。
私の口は、"若葉"と彼の新しい名前を呟いていた。
「この子も私と同じで、まだ外の世界を知らない。言わばルーキーです。
若葉から青葉へと成長していくように、すくすくと育って欲しい。だから……"若葉"。
……へ、変でしょうか?」
「そんなことないよ! すっごく素敵な名前!
色んなことをたっくさん経験して、それが実ると良いね。私にできることがあったら、何でも言って!」
「はい。ありがとうございます、ネモさん」
「同じクラスなんだから堅苦しいのはナシ! "ネモ"で良いよ。
さ、そろそろ寝よっか。明日はシオンの必需品とか買い出しに行かないとね」
真っ暗になった部屋の中で簡易ベッドに横たわって目を閉じる。
不思議な生き物のいるパルデア。新しいスクールライフ。
初めてづくしなこの世界で始まる生活に、逸る胸を抑えながら眠りについた。
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