03
「よーし! やるよ、クワッス!」
『はい、頑張ります!』
ネモさんと一緒に戦うのは、やはりクワッスだった。
"デビュー戦"と言っていたから、当然と言われればそうなのだけど。
「ニャオハ、お願いね。でも無茶だけはしないで」
『大丈夫だよ、シオン。僕に任せて!』
ニャオハはコートの中央付近まで進むと、クワッスを真っ直ぐ見つめた。
審判はクラベルさんが務めてくれることになり、彼の隣ではホゲータが"どっちも頑張れー"と声援を送っている。
ルールは至ってシンプル。ニャオハかクワッス、どちらかが戦闘不能になった方が負けというものだ。
"戦闘不能"という言葉を聞いて不安が大きくなったものの……。
そこは審判がちゃんと見極める義務があるらしく、ひとまず安心した。
「先手は譲るよ。どこからでもかかってきて!」
「で、では遠慮なく……! えっと……木の葉!」
『うん!』
緑色に光り輝く無数の木の葉が、クワッスへ向かって一直線に飛んでいく。
ネモさんはクワッスに攻撃を避けるよう指示を出す。彼は大きく横に跳び、直撃を免れたようだ。
なるほど、相手の攻撃を受けないように指示をするのも有効なのか。
「危なかったー! クワッスの苦手な草タイプの技を指示するなんて、やるじゃん!」
「あ、ありがとうございます……?」
"ヒヤッとしたー!"と言う彼女だけれど、その表情はまだまだ余裕だ。
チャンピオンランクだという彼女にとって、素人である私とのバトルはつまらないものだろう。
それでもゆっくりと試合を運んでくれるその様子に、面倒みの良さを感じさせた。
「私たちも行くよ、クワッス! 翼で打つ!」
『同期の誼ではありますが、手加減無しです!』
確かニャオハもクワッスも(もちろんホゲータも)、初心者用のポケモンだと聞いた気がするけれど……難しい言葉を知っているのね。
それよりも、"翼で打つ"ってどんな技なの!?
『シオン、飛行タイプの技が当たったら僕マズイよ!』
「え、えっと……翼に噛み付いて!」
ニャオハの言うことが正しいなら、飛行タイプの技は草タイプのニャオハに有利……なのよね?
ニャオハがクワッスの翼に噛み付き、動きを封じる。
痛みに顔を歪めた彼を見て、ごめんねと心の中で謝った。
「へぇ、そう来るんだ。それならこっちは……水鉄砲!」
クワッスの口から噴射された水がニャオハの顔面を襲った。それに対してこちらは引っ掻くで応戦する。
ニャオハの爪を避けようとして後ろへ大きく跳んだクワッスを見て、私は自然と次の技を叫んでいた。
「クワッスは草タイプが苦手……それなら……! 木の葉!!」
『うんっ!』
最初の時よりも数の多い、無数の木の葉がクワッスに直撃する。
そのままバトルコートに背中から落ちたクワッスは、目を回してしまったのだった。
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