02
「よーし、じゃあ始めようか! 今回の私のポケモンは……」
「ネモさん」
ネモさんがカバンをゴソゴソするのと同時に、彼女を呼ぶクラベルさんの声が聞こえた。
彼の後ろにはホゲータがポテポテと歩いている。
「シオンさんは初めての! ……ポケモンバトルですからね」
クラベルさんのその言葉を聞いたネモさんは、苦笑いしながら頬を掻く。
"うっかりいつものメンバーを出すところだった"と続いたのを聞いて、私は背筋にヒヤッとしたものを感じた。
「それに彼女はポケモンと触れ合うことに慣れていません。
なので、ゆっくりな試合運びをしてあげてください」
「分かりました。えぇと、それなら……さっきの子のデビュー戦だ!」
「それから、シオンさんにはこちらを」
そう言いながら差し出されたメモ用紙を受け取る。
そこには何かが書かれていて、思わず首を傾げた。
「ニャオハさんが使うことのできる技と、そのタイプを書いたメモです。
ひとまず、これを見ながらニャオハさんに指示を出してあげてください」
「は、はい。ありがとうございます」
指定の位置(たぶん)に着いたネモさんに倣い、私はその反対側に立つ。
私の心臓はリズム良く、しかしいつもより早く鼓動していた。
「じゃあシオン、実りある勝負をしよっ!」
「よ、よろしくお願いします……!」
初めての、それも元の世界では到底経験し得ないであろうこの瞬間。
不安ばかり抱えていた私の胸に、確かにポッと灯るものを感じていた。
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