01

「ああっ!」

突如隣から響いたネモさんの大きな声に、思わず肩が跳ねる。

彼女の方を振り向くと、それはもうキラキラとした目で私とニャオハを見ていた。

「そうだよ、ポケモンバトルするんだった!」

「ポケモン、バトル……?」

「えっ!? もしかしてシオン、ポケモンバトル知らないの!?」

あんなに楽しいのに!? と目を丸くされたけれど、そもそもポケモンのいない世界に生まれたので知る由もない。

私がポケモンのことで知っていることと言えば、ピカチュウの名前くらいなのだ。

「それなら実戦でやってみた方が良いよね!
という訳で、下のビーチにあるバトルコートに行くよ!」

早く早く! と子どものようにはしゃぐネモさんに腕を引かれながら、砂浜へと続く坂を下りる。

下りて行った先にはテニスコートよりも広そうなフィールドが設置されていた。

聞くところによれば、ネモさんのお家のプライベートビーチなのだとか。

「よし、到着! じゃあ簡単に説明するね。
私たちポケモントレーナーは、自分のポケモンを戦わせることで強く育てるんだよ」

「えっ、戦わせるのですか!?」

"戦わせる"というワードに強く反応してしまい、つい素っ頓狂な声を出してしまう。

それはつまり、相手を攻撃するように指示を出すということだ。

「そう! ポケモンと一緒にいれば、誰もがトレーナーだからね。
あまりバトルしない人もいるけど、私は大好きなんだ!
さてと……おしゃべりはこれくらいにして、早速戦ろうか!」

「待ってください! 私はこの子を戦わせたい訳では……!」

『シオン、僕やるよ!』

今まで大人しく抱っこされていたニャオハが、私の腕を蹴ってバトルコートに立った。

大きな桃色の瞳はキリッと釣り上がり、やる気に満ちている。

「……ニャオハはやる気満々みたいだよ?」

『クラベル先生から聞いたんだ。
トレーナーがポケモンを戦わせるのは、絆を深めるためだって。シオンは、僕と仲良くなりたくないの?』

「そ、そんなことはないけれど……でも……」

『もーっ、また元気無くなってる! よーし、これでもくらえーっ』

跳び上がってきたニャオハをキャッチすると、彼は前足の肉球を頬にムニイッと押し付けてきて。

さっきも嗅いだあの香りが鼻腔をくすぐり、気が付けば肩に入った力が抜けていた。

ホッとした顔になったのを見た彼は、"エッヘン"と言うように胸を張る。

「私も無理強いするつもりはないんだ。
でも、シオンにもポケモンバトルの楽しさを知って欲しくて……。
だからとりあえずさ、1回だけやってみない? それでも苦手意識が拭えないなら、もう2度と誘わないから」

ね、と微笑むネモさんと、ニャオハの顔を見比べる。

ニャオハは再度やる気を示すためなのか、フンスと鼻を鳴らした。

「分かり、ました……」

"郷に入っては郷に従え"という言葉もある。

彼女の言う通り、やるだけやってみよう。



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