05

モンスターボールから出てきたニャオハに抱っこをせがまれたので抱き上げる。

嬉しそうに喉を鳴らす様子を見ていたネモさんが、"そうだ!"と呟いた。

「クラベル先生、私も1匹選んでも良いですか?」

「おや? ネモさんは入学時にポケモンを……貰っていませんでしたか」

「はい、あの時は別に育てたいポケモンがいたので。
それに、シオンとニャオハを見てて思ったんです。今はシオンと一緒に、新しい子を迎えたいなって!」

「それは素敵な心掛けですね。是非シオンさんと同じスタートラインから始めてみてください」

"ありがとうございます!"と元気に答えたネモさんが、ホゲータとクワッスを交互に見る。

「シオンがニャオハなら、私はこの子で! よろしくね、クワッス!」

『はい、よろしくお願いします!』

ネモさんはクワッスをパートナーに選んだらしい。

彼をモンスターボールに戻すと、キラキラとした目をしながら私の方を振り向いた。

「……さてと。お互いポケモンを決めた訳だし、早速勝負しなくちゃ!」

「あ、あの……その前に1つお聞きしたいことがあるのですが……」

「なになに? 何でも聞いてよ!
ポケモンバトルのこと? それともタイプ相性のこととか?」

「えっと……ネモさんやクラベルさんも、この子たちと会話が通じたりするのでしょうか?」



「えっ?」



私の言葉に、ネモさんが目を丸くする。

そしてそれはクラベルさんも例外ではなかった。

3人が黙って立ち尽くすという異様な光景に、何か不躾なことを聞いてしまったのかと不安になる。

「まさか……シオンさんは彼らの言葉を理解できるのですか?」

「そう、なのでしょうか……?
この子たちの鳴き声が、脳内で自動的に人間の言葉に変換されている……ような……」

「……すごい……すごいよ、シオン!
どうやってそんな能力を身に付けたの!? トレーニングしたらできるものなのかな!?」

「ど、どうと言われましても……!」

元々他の生き物の言葉が分かる人間だった訳ではない。

パルデアに来る際に、いつの間にか身に付いたとしか思えないのだ。理由や方法なんて分かるはずもない。

「ごく稀にそういった能力を持つ方がいると聞いたことはありましたが……」

クラベルさんのあの反応を見て、私は確信した。

ポケモンは人間の言葉を話すことはできない。そして……人間はポケモンの言葉を理解することはできないのだと。

この能力が一般的ではないのなら、私がポケモンの言葉を理解できることは隠しておいた方が良いのだろう。

クラベルさんとネモさんにも、この事は誰にも言わないよう約束してもらった。


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