04
「ジニア先生、こんな所にいたのですか」
どこからか別の声が聞こえ、2人でそちらの方を振り向く。
視線の先にメガネをかけた初老の男性が歩いてくるのが見えた。
その足元では見たことのない生き物が3匹、トコトコと彼の後ろをついて歩いている。
「あっ、クラベル先生。もしかして、怒ってますぅ?」
「怒らせているという自覚があるのなら、もう少し節度を考えて欲しいものですね。
フィールドワークをするなとは言いませんが、時間を忘れて没頭するのを何とかしてください」
クラベル先生と呼ばれた男性がピシャリと言い放つと、ジニアさんは"アハハ、すみませぇん"と笑う。
反省しているのかしていないのか曖昧な様子に、クラベルさんは"ハァ……"と大きなため息を零した。
そして再び開けられた目が、私を映す。
「ところでジニア先生、そちらのお嬢さんは?」
「シオンさんって名前だそうですよぉ。
フィールドワーク中に空から落ちてくるのが見えたんで、受け止めようとしたんですけどぉ……」
「そ、空からですか!? お怪我は!?」
「だ、大丈夫です! その……私が彼を下敷きにしてしまって……」
砂の上だからまだ良かったようなものの(良くはないけれど)、これがコンクリートやセメントの上なら確実に大怪我している。
打ち所が悪ければ即死だっただろう。
「そう、ですか……。安心しました」
"あれぇ?クラベル先生、僕の心配はしてくれないんですかぁ?"
"あなたは意外と頑丈でしょう"
どこかピッタリと息の合っているようなやりとりに、思わず笑みが零れてしまう。
突然笑いだした私を見たジニアさんとクラベルさんの顔にも笑顔が浮かんだ。
「それはそうと、自己紹介もせず失礼しました。
私はクラベル。グレープアカデミーの校長をしています」
「ジニアさんの紹介に預かりました、シオンと申します」
クラベルさんと自己紹介をし合い、平たい岩の上に座る。
3匹の生き物たちには遊んでくるように伝え、楽しそうに駆けていくのを見送った。
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