04
楽しい話題に切り替えたおば様と少し雑談をして、その後は他の露店を色々と見て回った。
オリーブの木を使った食器のお店や工芸品のお店、チュロスやアイスクリームといった食べ物を売っているお店も見掛けた。
漂ってくる良い香りに、若葉のお腹がクゥゥゥ……と鳴るのが聞こえる。
「ねぇシオン、僕お腹すいちゃった」
「そういえばもう時期お昼ご飯の時間ね。せっかくだからパエリアを食べましょうか」
全員で連れ立ってパエリアを売っているお店に向かう。
人数分のパエリアを注文したところで、はたと気付いたことがあった。
(そうだわ、おじ様のお食事も買っていった方が良いかしら?)
朝からずっとお店にいるのだし、お客さんが来ればその場を離れられない。
大皿料理よりは、片手間に食べられるものの方が良いわよね。
「すみません。この、ピンチョスのセットも1つ」
「あいよ!」
『マスター、ピン……チョス? とはどのような料理なのでしょう?』
「ピンチョスは薄くスライスしたパンに、少量の食材を乗せて串を刺した軽食のことよ。
優慈おじ様に差し入れをしようと思って」
『ですが、それならパエリア? を一緒に食べれば良いのでは?
わざわざ別のものを用意せずとも……』
「お店というのはね、お客様がいついらっしゃるか分からないものなのよ。
接客している時はお食事の手も止まってしまうから、小休憩のついでにサッと食べられるお料理の方が良いと思ったの」
『なるほど、優慈殿の状況を考慮してのことだったのですね。
そこまでお考えだったとは流石です、マスター』
お会計を済ませて、お店の近くで待つこと数十分。
できたてのパエリアとピンチョスを受け取って、私たちはその近くの公園でレジャーシートを広げた。
「美味しそう〜!」
「えぇ、シーフードの良い香りだわ」
『早く食べようよ! オレもうお腹ペコペコ!』
「お前は少し落ち着け。取り分けてやるから待っていろ」
お店の人に付けてもらった紙皿とスプーンを配り、佑真がパエリアを取り分けていく。
その隣にお行儀良く座って待っているミライドンが見えて、微笑ましくなってつい笑ってしまった。
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