06



食事を終え、ノモセ大湿原にやって来た私たち。人が多いということで二手に別れ、私の方にはティナとユイ、晶が来ることになった。


「じゃーねー」
「それじゃあまた後で」
「何気に俺たちも大湿原初じゃん!」
「……あのメンバーに晶混ぜて大丈夫な訳」
「じゃんけんで決めたのですから……でも、マスターが心配です」

「緋翠がこの世の終わりとでも言いたげな顔で見てるわね、晶を」
「僕がそんなに信用ならないかひっつき虫。安心しろ、流石に大湿原のポケモンにバトルは挑まん」
『……はぁ、そういう事じゃねぇだろ』
「むむむ……綿毛鳥とひねくれ化け狐か……仕方あるまい」
「わーすごい、あれ電車かな?」
「……ここが、大湿原」


入口のゲートを通り、拓かれた大湿原はその名の通り、広大な湿原だった。湿地で足場が悪いからか人の足では時間内に全てのエリアを回ることが難しいからか、前方に列車が設備されていて、行きたいところを選べば自動で発進してくれるらしい。

とりあえず、一番北のエリアに向かうため列車に乗る。翠姫が我先にとスイッチを押した。


「おぉう。走る、走るぞ!」
「あら、向こうに璃珀たちがいるわね。手を振ったら気づくかしら」
「晶、どうして手すりに掴まってるの?……もしかして突然動きだしてビビったとか」
「そ、そんな事あるか!これはバランスを崩して転びかけただけだ!」
「どちらにせよ情けないことに変わりないでは無いか綿毛鳥。貴様はそのまま腰を抜かして手すりに掴まり続けるのが似合っておるぞ」
「貴様……ぼうふうを喰らわせてシンオウの未踏の地へ吹き飛ばしてやろうか」
「ほぅ?ならばわらわはたつまきを喰らわして貴様の目を無様に回させ他の男共に見せつけてやっても良いのじゃぞ?」
「2人とも、喧嘩しない」
『……おちおち寝れやしないな』


この2人、相性最悪。どこか似ている部分もあるからか、犬猿の仲ってやつだ。翠姫も晶も“売り言葉に買い言葉”って表現が似合うし。

するとコホンとティナが小さく咳払いをする。お前たち、と少し低い声でティナが呟くのを聞いた晶の背中が強ばった。


「……あたしを怒らせないことね。事と場合によっては、あたしは身内でも容赦しないわよ」
「ま、まずい。今すぐしおらしくなれ草蛇娘」
「わらわをそのような名で呼ぶな無礼者!」
「翠姫」


にっこりという表現が似合う、麗らかな笑み。けれど何故だろう、背後から恐ろしいものを感じるのは。翠姫もそれを感じ取ったようで、びくりと身体が跳ねた。


「お願いね。あたし、怒りたくないの」
「……わ、分かっておる……。わらわも楽しい旅行を台無しにしたくないのは同じじゃ」
「さっすがティナちゃん。かっこいー」
「……アンタの周りって、個性的」


その後、あの2人は言い合いをすることも無く、私たちは至って平和に大湿原を堪能することができたのであった。


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