05



「あれ、師匠じゃん!?」
「こんにちはお前たち。トレーニングはサボってないかしら?」
「な、何故怪力女がここに……!」
「相変わらず口の減らない男ね。こおりのキバを喰らわせてその口を閉じてあげましょうか」


お淑やかに微笑みながら発するオーラは堪らず身震いするものがある。ノモセシティに着いて待ち合わせ予定のPC前で他の仲間たちと無事合流を果たした。紅眞とティナは師弟関係にあるんだね。ティナに正しく90°一礼している紅眞を見た翠姫が「男を従えておるのかティナ!」と尊敬の眼差しでティナを見つめていた。


「それじゃあ紅眞くんのご飯を食べたあと大湿原に向かおうか。姉さんも来る?」
「……そうね。今日は特に予定も無いし」
「なーちゃんもいっしょだー」


それぞれが席に着き、いただきますと食事が始まる。
……ポケモンの作ったご飯を食べるの、初めてだ。味は大丈夫なんだろうかと不安になったけど、その不安は一口食べた途端消え去った。


「……美味しい」
「まこと美味よ……!これを作ったのがあの脚長軍鶏とは信じられぬ」
「へへっ、紫闇も良かったら食ってくれよな!」
『……悪い物は入ってなさそうだな』
「毒なんて入れねぇって」


クンクンと匂いを嗅ぎつつ、紫闇も一口食べてくれた。何も言わないけど食べるスピードは落ちないから、お気に召したんだろう。


「いつも君が料理してるの?ポケモンフーズとかじゃなくて?」
「おう。ユイも手伝ってくれる時あるし、元々料理は好きだし」
「……でも、」


“君たちの食事を用意するのは私たちの務めじゃないか”

そう言おうと思って口を噤んだ。私は以前、チョロネコとのバトルでも私の感情だけで彼に攻撃することを一度拒んだ。チョロネコ自身の気持ちを考えていなかった事があった。

今だってそう。“ポケモンに食事を作らせている”と思ってしまったけど、紅眞自身は笑って楽しそうにみんなが食べている様子を眺めている。私がカルチャーショックを感じただけで、彼が本当にそうしたいからそうしているんだ。そこに水を指すのは違うし、私だって本意ではない。ポケモンにだって感情があり、こうしたいという欲がある。私の価値観だけで判断してはいけないんだ。

なら、今の私にできることは……──


「……本当に、美味しい。ありがとう紅眞」


こうして彼に、作ってくれたお礼を伝えることなのだろう。


「いーってことよ!」


にひひと嬉しそうに笑った紅眞の顔が、印象的だった。





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