05


ふれあい広場に到着すれば普段の自然豊かな公園はなりを潜め、色とりどりのイルミネーションにカボチャのランタンが光を灯し、ハロウィンパーティーと呼ぶに相応しい舞台に変身していた。
キャラメルを溶かした甘い香りが鼻腔をくすぐり、他には外で冷えるからとカボチャを摸したお皿にパンプキンシチューが振る舞われている。お腹すいてきたな……。


「あの人だかり、なんだろ?」


人の騒いでる声が聞こえてくる集まりに近付いてみると、タイミング良く指示を飛ばす声が聞こえポケモンが放ったバブルこうせんとオーロラビームが合わさり、涼やかな光が降り注ぐ。周りの人たちもその綺麗な光景に拍手やエールを送っていた。


『下にいるケイコウオとポッタイシの合わせ技みたいだね』
『話に出てたパフォーマンスの場所ってここなんじゃない』


ほんとだ、みんな我先にとばかりに次々にステージに上がり技を繰り出してる。ピカチュウとパチリスの電気で電気花火を起こしたり、ブイゼル2匹のアクアジェットの水の軌跡で文字を描いたり。その飛沫を利用して今度はユキメノコの氷のイリュージョンが繰り広げられる。誰も打ち合わせしてないはずなのにここまで完成されたパフォーマンスを繰り広げられるなんて、本当にお祭りみたいだ。

すると突然、後ろから抱き着かれた。慌てて振り返ると幼い女の子たちが目をキラキラさせて私を見上げる。


「おねえちゃん、イーブイだ!」
「一緒にお写真撮って!……わぁ、ポケモンさんも可愛い!」
「え、私?」


……しかいないよね、イーブイの格好してる人なんて。他にも素敵な仮装の人たちがいるのに私でいいのかなあ。まあこの子たちが良いならと同伴していた親らしき人に話を通して一緒に写真を撮り笑顔で別れると、何故か他の人たちにも話しかけられまた写真を撮る羽目に。
紅眞たちが私を連れ出そうとしても原型に戻っているのと仮装をしているからか、上手く動けずにいるようだった。


(私もお菓子食べたりしたいよぉ)
「あれ、君話聞いてる?」
「この後一緒にどーぉ?」


とはいえ折角声をかけてくれたんだからと無下にもできずにいると、突然視界に白い物が映る。


「あれ、雪……?」
「なんでこんな時期に雪が降ってくるんだよ」
「うわ、マジかよ俺寒いのダメだわ。建物の中に入ろうぜ」
「じゃーなー、おじょーチャン」


途端に集まっていた人たちはそそくさと去っていった。それと同時に紅眞たちがようやくこっちに戻ってこれたようだ。


『マスター、お傍でお守りできず申し訳ございません!あのような輩が出ることを想定していたのですが、返さなければならない衣装を汚してしまうのもマスターにご迷惑がかかると思い……』
「いやいや、あれは写真を撮ろうって話しかけてくれてただけだし。私お菓子食べたいなぁくらいしか考えてなかったよ?」
『こりゃ話聞いてなかったな』
『めでたしめでたし』
「それよりも突然どうして雪が降ってきたんだろ?」
「この危機感無し」


その言葉と共に頭部に衝撃が走る。チョップされた。いつの間にか碧雅がボールから出ていて人型をとっていた。その手にはもはや見慣れたソフトクリーム、あれはきっとスイートパンプキンマホイップ味だ。


「この程度で退散する奴らで良かったね」
「バカにされた気がする」
『そっかこの雪、碧雅が起こしたのかー』
『グレイシアは空気を凍らせてダイヤモンドダストを降らせると言いますからね』
「これ、ただのあられなんだけど」
『でもきれーだよみゃーちゃん』


確かに、雪って綺麗だよね。他のポケモンのパフォーマンスも綺麗だし素敵だけど、私はこういう自然なものの方が好きかも。
すると晶と璃珀もボールから出てくる。雪で人気が少なくなって良かったね。


「早く行くぞちんちくりん」
「あれ、晶ボールにいるんじゃなかったの?」
「心配になったんだよね、晶くん」
「僕が気になったものをこのちんちくりんが言われた通りに理解できるとは思わないからだ。手始めにあそこの百味ポフィンから行くぞ」
『げっ、あれって中にはゲテモノな味があるポフィンじゃねーか』


晶がズンズンと先導し、璃珀がそれを面白そうに見つめながら着いていき、白恵が碧雅の手を引っ張って、碧雅がアイスを食べながら白恵と進んで行き、紅眞がゲテモノに当たりませんようにと祈りながらすれ違うお化けの仮装に驚いて、緋翠が私の衣装を整えて参りましょうと手を差し出して。


「…………。」


季節外れの雪空を眺める。
普段と違う格好で、普段と違う街の雰囲気で、普段と違う人たちの中で。


(なんておかしくて、楽しい日なんだろう!)


夜はまだ始まったばかり、楽しい時間はこれからだ!


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