03


「ハーイユイサン!お久しぶりデース!」
「メリッサさん、お久しぶりでぐぼっ」


時刻も夕方近くなってきたので、衣装の貸し出しをしているコンテスト会場に向かう。会場で最初に出会ったのはメリッサさんだった。私と目が合うや否やダッシュで駆け寄ってきて、勢いのままハグされる。ジム戦の時もそうだったけど、メリッサさんはスキンシップが激しい。カエルの潰れたような声が出ちゃったけど不可抗力だと思う。隣にいたメリッサさんのムウマージにケタケタ笑われちゃった。


『アハハハ!アンタ元気そうで何よりネ!!』
「今日のイベントはユイさんも参加されるのデスか?衣装はまだ沢山ありますから、好きなの選んでクダサーイ!」
「ありがとうございます……。それにしても、本当に無料で貸し出してくれてるんですね」
「エエ、これはアタシのアイデアデース。衣装も着られないのならタダの布、折角のキレイなお洋服たちが仕舞われたままなのはカワイソウデス」


衣装部屋から出てくる仮装した人たちはハロウィンの仮装、と言うよりはもう少し煌びやかな、様々な意匠が施されたフォーマルな物を着ている人たちが多い印象だった。確かにコンテストの衣装は多種多様だし、持参してくる人も多い。レンタルの衣装を使う機会が少ないからこういう場で機会を増やすのは良い試みだと思う。


「あとはやっぱり、今回のイベントを機にコンテストに興味を持ってもらうのも狙いの一つデスね!」


……そういえばメリッサさん、コンテストでも活躍してたんだっけ。コンテストパフォーマンスもイベントの一部に入ってたみたいだし、結構ちゃっかりしてるなぁ。

さあさあ!とメリッサさんに促され、ムウマージに仲間のボールを回収され、私は一人で衣装部屋に行くことになってしまった。
あ、碧雅が無理やり着せられた衣装は返しといたよ。「oh……なんて勿体ない!」なんて、メリッサさんは余程碧雅に仮装させたいらしくて悔しそうだった。


人が20人は有に入れる広い衣装部屋は正に服の宝物庫。可愛めのドレスや男装用のタキシードもあれば、ハロウィンらしいお化けの布や魔女風のワンピースまで選り取りみどりだ。どれにしようかな。


『ネェネェ!アンタまだ悩んでるノ?』
『ばるんたち、遊びに来たよぉ』
「あれ?メリッサさんのポケモンたち?」


なんでこんなところにと聞くまでもなく、ムウマージが『ヒマなのヨ!』と上下逆さまに漂いながら訴えてきた。フワライドのばるんも久しぶりだね、と頭を撫でてやれば喜びを示すかのように手のような4つの部分を掲げふわふわ舞い上がった。


『アンタ、せっかくならこれ着てみなヨ』
「……これって」


ムウマージが持ってきたのは自分と同じカラーの紫のローブと帽子。真ん中の赤いジュエリーが良いアクセントになってる。ムウマージをイメージした衣装なのかな、結構可愛いかも。
するとフワライドがムウマージを押し退けるようにふわふわと浮かび、私に一着の服を渡してきた。


『ばるんはこれがいいなぁ』
『ケッ!ただ布を被るだけのものじゃないノ!』
『でも似合うと思うよぉ?』
「フワライドの……被り物?」


人一人は丸々と入れそうなくらい大きなフワライドの被り物。とはいえ本物のような球体にはなれないけど、まるで着ぐるみみたい。どうやらお互い自分の種族の仮装をして欲しいみたいで、いがみ合ってる(ほぼムウマージしかしてない)2匹がちょっと可愛いと思ってしまったのは内緒。折角選んでくれたんだしどちらにしようか悩んでいると、ふとある事が閃いた。


「…………。」
『アンタどこいくノ?』
『着替えないのぉ?』
「……いい事思いついちゃった!」
『『?』』


この時の私の笑みはさぞかし楽しそうだったに違いない。


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