01


「ヨスガシティ、到着〜!」
「うわ、すげー人ばっか」


久々のヨスガシティにやって来た私たちはゲートを抜けた途端溢れかえる人の数に圧倒された。


『元々シンオウ地方の中心に位置する街だから人通りは多いけど、ここまで多いのは珍しいね』
「人酔いする……ハァ、僕は別ルートでPCに向かう」
「今回ばかりはボールで待機してる緋翠たちが正解だったかもね。じゃ、碧雅はまた後で合流ね」


人がたくさん集まると暑いもんね。碧雅は人通りの少ない裏道を通っていくみたい。


『マスター、大丈夫ですか?マスターは小柄ですから人の流れに巻き込まれやすいですし……』
『ユイちゃん、だっこー』
「え?」


緋翠が心配してくれる傍ら、トゲピーの状態でボールから出た白恵がぴょんと私の胸元に飛び込む。慌ててキャッチすると人の良さそうなお婆さんがあらあらと笑いながら私に話し掛けてきた。


「まぁ、可愛いトゲピーちゃんね。お嬢さんも今夜のイベントに参加予定なの?」
「イベントですか?」
「ええそうよ、今日はなんたってハロウィンだから。今夜はシティ総出で盛大なハロウィンパーティーを行うのよ」
「あ、今日ハロウィンだっけ?」


旅をしているとどうも日付の感覚がズレちゃうなぁ。この世界にもハロウィンの文化があるんだね、初耳だ。それにしても、パーティーって何するんだろう?不思議そうな顔をしている私にお婆さんはふふっと楽しそうに笑いながら教えてくれた。


「お嬢さんは初めてなのね。ヨスガシティは毎年ハロウィンの季節になるとこうやって街のみんなでイベントを開くのよ。大抵はコンテスト会場の衣装が貸し出されるからみんなで仮装して、ふれあい広場でスイーツやポケモンたちのお菓子を用意したり……あと街もハロウィンっぽく装飾するのよね」


そう言われ辺りをよく見てみれば、カボチャのランタンが至る所に飾られていたり、すれ違う人や子どもたちの中に魔女の帽子を被っている人がいたり、ピカチュウに似たような顔が描かれた布を被って歩いている子もいる(ミミッキュというポケモンの仮装だろうと後で璃珀に教えてもらった)。元々洋風の建築物が多い街だから夜になったら更に雰囲気出そうだな。


「あとはふれあい広場でのコンテストパフォーマンスが楽しいのよ。コーディネーターじゃなくてもみんな好きに技を振る舞っていいから、ちょっとしたお祭り騒ぎになるわね」
「へぇー……楽しそうですね!」


折角参加できるなら出てみたい気持ちはある。特に予定がある訳でもないしね。隣で話を聞いていた紅眞も目を爛々と輝かせていた。


「出てみようぜユイ!」
「うん!ただ、晶がなんて言うか……」
「まーまずは宿を確保してからだな!ばーさん、教えてくれてありがとなー!」
「わ!……あ、あの!ありがとうございましたー!」
『おばーちゃん、ばいばーい』
「はーい、楽しんでねー」


紅眞がニカッと笑顔でお礼を言って颯爽と私の手を取って走り出した。紅眞のスピードについて行くのと白恵を離さないように手に力を込めるのに必死だったけど、予定より早く着いたおかげが無事にPCの部屋を確保することができたのだった。


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